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2014-06-05 06:45
明暗を分けた維新の「分党」
杉浦 正章
政治評論家
橋下新党が36人にとどまり、石原新党が22人に達したことの意味は、国政未経験の維新共同代表・橋下徹の遠隔操作政治の限界を如実に物語っている。7月の新党結成を目指す結いの党の江田憲司の人気もぱっとせず、橋下とともに“負の合流”の色彩が濃厚だ。焦点は「海江田降ろし」が始まっている民主党の動向に絞られる。既に元代表・前原誠司ら保守系が集団的自衛権容認論で執行部を揺さぶっており、波乱含みだ。海江田が党再建路線でまとめられるかどうかの正念場にかかろうとしている。6月4日、新党に向けて集まった人数が22人と発表した石原は、当初10人程度とみられていただけに得意満面で、「非常に痛快な思いだ。身命を賭して、本当の保守、新しい保守というものを実行していきたい」と高らかに“勝利宣言”をした。安倍政権との距離については「徹底した是是非非」と表明したが、基本的には一段と政権寄りの姿勢を強めるものとみられる。
石原は去る5月28日に分党を決めた名古屋会談で橋下との別れ際に「ボクは君が好きだよ」と、聞いている方が恥ずかしくなるような発言をした。「別れても好きな人」とやゆされたが、その実態は「別れても嫌な人」であるらしい。言葉とは裏腹に多数派工作は激化の一途をたどり、石原側が数を伸ばして、橋下側が食われた形となった。当初橋下は維新と結いを核としてみんなや民主を巻き込み100人規模の政党を目指していた。しかしそれが困難と分かると、結いとの合併で55人の民主を抜いて、62人の野党第1党達成に方針を転換した。ところが結いの江田が主張する「自主憲法制定路線の排除」に、石原が強く反発して、分党となった。石原は結いとの合流について「支持率1%の政党が1%未満の政党と一緒になっても大きな存在にはなり得ない」と止めにかかったが、橋下は聞く耳を持たなかった。石原はテレビで「好きな人」であるはずの橋下について「橋下君は『ふわっとした民意を重視する』と言うが、これは危険なポピュリズムだ」と、あからさまに批判するに到った。
石原は「永田町の政治常識を大阪の人が持ち得ないもどかしさ」と形容して、橋下と共同の党運営の難しさを漏らした。石原にしてみれば、政界で人気のない江田と合流しても、無意味である事が分からない橋下が「もどかしい」のである。一方で橋下は「夢よもう一度」の思いが消えない。しかし金科玉条とする大阪都構想は政界ではまともに相手にされず、急きょ市民の民意をバックにしようと狙った市長選も投票率の激減というアッパーカットを食らって失敗。それでも野党再編という「数合わせ」だけで、結集を図ろうとしているのは、ポピュリストの“さが”であろうか。結いの江田は、石原が「昔の社会党と同じ」と形容するように、その主張はリベラル傾向が強い。従って維新とは憲法観、集団的自衛権、原発再稼働などをめぐってずれを見せており、今後石原との対立以上の波乱要因を抱えるかも知れない。総じて言えば、極東環境の急変による社会全体の右傾化の流れが、石原新党を増やした。
一方民主党は、当面前原の動きが焦点だ。前原は橋下との接触を繰り返し、再編志向が強いが、その目指すところはあくまで民主党中心の再編であり、数人を引き連れて維新と合流することは嫌だろう。ポスト海江田の候補とされる元代表・岡田克也も党再建論であり、分裂を選択する方針をとらない。当面前原らは集団的自衛権の限定容認で海江田を突き上げる方針だ。海江田は左派中心の執行部を意識して、「集団的自衛権は憲法改正によるべき」だとして反対の姿勢を強くしている。対立は先鋭化しており、海江田の力量でまとめきることは難しいとの見方が強い。激突のコースをたどれば、それがきっかけで何が起きてもおかしくない状況に到りつつある。橋下新党ペースでの再編は難しいにしても、統一地方選挙や国政選挙に向けて一強自民党に対する多弱の再編の試行錯誤が続くだろう。
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