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2014-05-30 11:38
コペルニクス的転換をしたサウジアラビアの外交政策
川上 高司
拓殖大学教授
サウジアラビアのファイサル外相は、5月13日、イランのザリフ外相を王国へ招待したと発表、サウジアラビアはイランとともにこの中東地域の安定のために協力して取り組みたいという意向を示した。イラン側は正式に返事をしていないと前置きしながらも招待を歓迎すると表明し、長年の両国の険悪な関係の改善に意欲を示している。
スンニ派アラブ人が大多数のサウジアラビアにとっては、ペルシャ人でシーア派が大多数のイランはまさに長年の宿敵である。サウジが昨年10月にアメリカのイランとの宥和政策に猛反発していたことは、記憶に新しい。そのサウジアラビアが、外交政策においてまさにコペルニクス的転換をしようとしているのである。
サウジアラビアとイランは、シリア内戦でもそれぞれの宗派を支援しておりシリア内戦はサウジとイランの代理戦争とも言える側面も持っているほどである。にもかかわらず、このような協調路線に踏み切らざるを得ないほどにアルカイーダやISISの脅威がサウジ自身に迫っているということは十分考えられる。シリアの内戦を終結させ、イラク西部とシリア東部に広がりつつあるISISの脅威を押さえ込むには、イランの協力が必要である。また、アメリカが中東の石油への依存を低めつつあるためサウジアラビアのアメリカに対する影響力も小さくなりつつある。
アメリカが今後イランとの関係をさらに強めていくと、逆にサウジアラビアは孤立しかねない。5月14日にはサウジアラビアを訪問中のヘーゲル国防長官に対してアメリカが湾岸地域への関与を維持するようにと要請したが、そこにはサウジアラビアの苦しい事情が現れている。元を質せばイランとアメリカの宥和が始まりであり、いよいよこの地域の地殻変動が本格的になりつつある。
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