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2014-05-20 06:51
近ごろ都に流行るもの「我田引水偽調査」
杉浦 正章
政治評論家
落書きの最高傑作と評価される「二条河原の落書」を真似るのは恐れ多いが、試みる。「近ごろ都に流行るもの。虚言、ねつ造、ねじ曲げ社説。我田引水偽(にせ)調査。学会口出しゃ政教合体、赤旗招けば爺(じじ)喜々と。しまいにゃ解散せよという」といったところか。中でも一番たちが悪いのは「我田引水偽調査」だ。集団的自衛権の是非をめぐる世論調査の結果が、実施するマスコミによって大きく食い違っている。特に集団的自衛権の行使反対のメディアが、調査の設問で回答が意図的に変わる世論調査の特質を活用して、我田引水を図っている。朝日、共同などがそうだが、驚いたことに毎日は、最初に報道した調査が気に入らないと見えて、朝日、共同と同じ調査に変更して、「反対多数」の数字をはじき出している。世論調査のトリックは、2択で聞くか3択で聞くかで回答が激変するところにある。2択は、集団的自衛権に賛成か反対か。3択は、その間に「必要最小限の限定行使」への賛否を問う。2択の落とし穴は、総じて「憲法の解釈を変えて行使容認することに」といった前置きを置く点だ。誰もが平和憲法は大好きだから、反対が多く出るのは当然だ。その結果朝日は反対が56%、賛成が27%だ。
ところが首相・安倍晋三が行おうとしている解釈改憲は、集団的自衛権の限定行使であり、限定行使の設問は現実を反映するためには不可欠だ。従って読売は「全面的に必要」が8%、「必要最小限の容認」が63%、「必要ない」が25%だ。合計71%が賛成だ。産経も同様の数字だ。毎日は、3択で「賛成」が合計56%に達したのが失敗と感じたのであろう。5月19日付紙面で2択にやり直して「反対」54%、「賛成」38%を引き出している。ご立派としかいいようがない編集方針だ。朝日は、この差について読者から問い合わせが続出したと見えて、14日の紙面で言い訳記事を書いている。ところがその内容は「選択肢の多い方が回答の比率は高くなる傾向がある」と回答者の意志を小馬鹿にした分析をしたかと思えば、「必要最小限という文言が加わると、反対しにくくなる」と説明した。これこそ語るに落ちた説明である。なぜなら反対しにくくなる事が困ると言うことを自ら表明しているのと同じだからだ。こうしたからくりの上に、まことしやかな世論調査なるものが成り立っていては、よほどの左翼でもなければ報道の中立性に疑問を抱くだろう。世論調査で一番やってはいけない「我田引水」を図っているからだ。
「学会口出しゃ政教合体」は、昨日の本欄への投稿で報道のトップを切って指摘したとおり、憲法違反だ。創価学会による集団的自衛権の行使反対声明は、明らかに憲法の政教分離原則に反する。自民党幹事長・石破茂は思わぬ追い風に記者団に「政教分離だ。公明党の判断に主体性がなくなったとか、支持母体の言うがままだということはない」と述べ、筆者の報道と同様の見解を表明し、公明党が学会の見解の影響を受けることを強く牽制(けんせい)した。公明党代表・山口那津男は「まずい」と思ったか、何度聞かれても「コメントすることはありません」で押し通した。さすがに弁護士、コメントすれば憲法違反を指摘されると思ったのだろう。「赤旗招けば爺(じじ)喜々と」は、政界を引退したはずの自民党内ハト派長老が、こともあろうに共産党機関誌「しんぶん赤旗」に次々と登場して、持論を報道してもらっていることだ。いくらハト派でも極左の新聞にまるで身売りのように登場するのはいかがなものか。
古賀誠が「憲法の平和主義は『世界遺産』に匹敵する」と息巻けば、野中広務が特定秘密保護法案反対を訴える。加藤紘一にいたっては集団的自衛権の行使容認について「徴兵制まで行き着きかねない」と極論を展開。あらためて自民党内でつまはじきにされた原因を露呈させた。委員長・志位和夫がほくほく顔で記者会見し、加藤、古賀、野中の名を挙げ、「保守政治を屋台骨で支えてきた人々がこぞって集団的自衛権の行使に反対している」とPRしている。いくら不遇をかこっているとはいえ、宿敵のPRに利用されては晩節を汚すだけであることに早く気付いてほしいものだが、無理だろうか。最後が「しまいにゃ解散せよという」だ。自民党憲法改正推進本部長・船田元が5月19日、「憲法改正に伴う国民投票の手続きをとらない代わりに、衆院の解散・総選挙も一つの手段だ」と述べた。本人も言いすぎたと思ったか、この後テレビで「私に解散権はない。総理に委ねる」とトーンダウンした。しかし、自民党幹部が口火を切ったことは、今後集団的自衛権の行使に絡んだ解散論議に火をつけることは間違いない。もっとも、現在の自民党293議席は目一杯の勢力であり、安倍がこれを1年半で手放すわけがない。ダブル選挙でなければ維持できない数だからだ。
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