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2014-05-19 22:41
シリアでブーメランのように返ってきた脅威
川上 高司
拓殖大学教授
シリアの内戦は一向に終わりが見えない。反政府側はアルカイーダと関連のあるISISやアル・ヌスラが勢力を強め、穏健グループのシリア自由軍は見る影もない。イラク西部ではISISが勢力を伸ばす一方で国境を接するシリア東部はISISに制圧されつつある。ISISの理想通りこの地域にアルカイーダの勢力範囲が構築されようとしている。
そのアルカイーダの勢いは止まることがない。かねてから過激派の影響を懸念していたサウジアラビアでもISISと関連のあるジハード組織の存在が確認されたと当局は発表した。サウジの懸念は、北部からシリアとイラクの過激派、南部からはイエメンの過激派の脅威が浸透しつつあることから最大級となっている。サウジアラビアはシリアの反政府グループを支援してきた。アサド大統領がシーア派であることから、シリアにスンニ派政権を立てようとアサド大統領の失脚を目指していた。だが反政府側はまとまらず、さらに過激派の流入によってサウジの目論みからは大きくはずれ自国にとって最悪の脅威がブーメランのように戻ってきたのだ。
そのためサウジは戦略を変更した。ひとつはアルカイーダと闘うことであり同時にアサド大統領の追放を目指して穏健なシリア反政府グループを支援するというものだ。だが、周辺国のシリア内戦への関与が内戦を複雑にし長期化させ、政治的解決を困難にしているという事実から見れば、サウジの戦略はますます内戦の終結を遠くへ追いやる。そしてその間隙をぬって過激派が勢力を確立する可能性は高い。
折しもオバマ政権は穏健なシリア反政府グループに対戦車ミサイルを供与することを決めた。これまでは人道的支援にとどめていたアメリカがとうとう最初の1歩を踏み出す。最初の1歩はいつも小さい。これがやがて大きな悲劇をもたらすことは歴史が示している。皮肉なことにアメリカが軍事支援をすればそこにアルカイーダの勢力が根を張る。その最大の被害者は常にその国の市民である。ウクライナ問題で停滞したロシアとの関係を改善し、シリアの内戦終結に向けて両国が協力するべきである。
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