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2014-04-08 07:00
渡辺辞任で石破が浅尾を“先物買い”?
杉浦 正章
政治評論家
みんなの党代表・渡辺喜美の辞任が、同党と安倍政権との蜜月関係と野党再編にどう影響するかが焦点となる。首相・安倍晋三にとって最大の懸念は、“ミニ政党液状化”が政権最大の課題である集団的自衛権の容認問題にどのような影響を及ぼすかだが、既ににみんなの党内は解釈改憲の流れで固まりつつある。維新は限定容認に向けての独自案を提唱しており、両党の方向は大きな変化を生じないだろう。問題は「一兵卒」として働くというみんなの党代表・渡辺喜美が党内に「院政」を敷けるかどうかだが、4月7日の記者会見を見る限り疑惑は解かれていない。従って当分の間、渡辺は泥沼に足を突っ込んだまま身動きできない状況だろう。再び党幹部に返り咲けるどうかは微妙であり、一部野党は議員辞職にまで追い込もうとしている。「渡辺商店」というだけあって次の顔が見えないが、後継には幹事長・浅尾慶一郎の名前が取りざたされている。自民党幹事長・石破茂は早くも先物買いか「集団的自衛権をめぐって浅尾幹事長は正確な理解をしている」と持ち上げた。
確かに浅尾は集団的自衛権について容認論だ。NHKの討論でも「まず集団的自衛権の行使を決めて、行使できる範囲は法律で制限すれば良い」との考えを表明している。渡辺も「安倍政権への連携重視は継続して欲しい」と“遺言”を残している。浅尾は「党内の結束が一番大事だ。できるだけ早く新体制を固めたい」とも述べて、他の党から食いちぎられ、再分裂することを警戒している。次期代表を意識しているかのように見える。みんなを分かれた結いの党からは、早くも「一緒に維新と合流しよう」との働きかけが若手に行われ始めており、党内の動揺が収拾するのには時間がかかるだろう。よほど締めてかからないと、さらなる党分裂もあり得ると見なければなるまい。一方で維新の弱体化も目立つ。維新共同代表・橋下徹は、無駄な市長選の結果、低投票率という拒絶反応のパンチを食らい、政界での動きもままならぬ状況だ。ただ集団的自衛権については幹事長・松野頼久が前向き姿勢を維持している。同党は限定容認に向けて6条件を提唱している。民主党右派も限定的容認で推進の方向である。
何でも集団的自衛権の容認にケチを付けたいマスコミが「安倍首相は両党の弱体化で、公明党に対するカードが切りにくくなった」と鬼の首を取ったように報道しているが、容認への大きな構図には変化がないのが実態だ。問題は公明党が「責任野党」の弱体化を“活用”して、容認阻止への動きを強める可能性があることだ。いずれにしても石破は、高知市で「断固やり抜くのが、われわれに与えられた責任だ。選挙に落ちるなどと言って本当のことを語らないのは、自己保身だ」と不退転の決意を表明しており、渡辺が退任しようがしまいが、まい進する方針に変わりはない。
それにしても渡辺の釈明に関しては、全てが説得力に欠ける。これまで「8億円は皆使った」としてきたが、突然「妻の口座」が出てきて、5億5000万円が振り込んであると説明した。それでは妻の口座を党の調査に委ねるかといえば、委ねない。そもそも8億円は参院選挙と総選挙の直前の振り込みであり、これが選挙費用でないことはあり得ない。総選挙で5億円などあっという間に消えてしまっているはずだ。それを雲隠れの1週間であちこちからかき集めて「妻の口座」に振り込んだに違いない。貸し主の化粧品大手DHC会長・吉田嘉明自身が「選挙資金であった」と説明しており、吉田が最初に「追い落とす」と言った構図は変わっていない。選挙資金なら収支報告書への虚偽記載というまぎれもない公職選挙法違反であり、今後国会などでの追及に渡辺が釈明しきれるかどうか微妙だ。みんなの党の信頼回復のためには、さらなる説明が必要なことは当然だ。
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