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2014-02-28 14:39
新たな大量破壊兵器と闘うアメリカ
川上 高司
拓殖大学教授
世界中で気候に異変が起きている。イギリスでは季節外れの洪水に見舞われ、アメリカでも前代未聞の大寒波に襲われミシガン湖が凍結するに至った。日本でも大雪に見舞われた地域では厳しい状況が続く。被災された方々が一日も早く生活を取り戻すことを祈るばかりである。
そんな気候変動に苦しんでいる世界に配慮したのか、ケリー長官が次の外交課題は「気候変動だ」と宣言した。これは2月16日、インドネシアでのアメリカ大使館主催の講演会でケリー長官が語ったものである。二酸化炭素の増加による温暖化によって海水温の上昇、強大化する台風、上昇する海面、気候変動などによってわれわれの生存はかつてない脅威にさらされていると強調、「気候変動はいわば大量破壊兵器だ」と断言した。
昨年フィリピンを襲った強大台風の被害をフィリピン代表が、国際会議で涙ながらに訴え気候変動に取り組むことを強く主張したが、国際社会の反応は鈍かった。だが、二酸化炭素排出量では中国に次いで2番目のアメリカが温暖化対策に乗り出すとなれば、世界の流れも変わる可能性がある。中国、アメリカ、インドネシアは二酸化炭素排出国として上位3位を占める。これらの国が積極的に削減に取り組まなければ意味がない、とケリー長官はインドネシアにも排出削減に取り組むように呼びかけた。インドネシアの後は中国を訪問する予定だが、おそらく中国でも温暖化の話題を話し合うと予測されている。
二酸化炭素排出量をめぐっては各国の利害が絡んでいるため調整が進まずアメリカはむしろ温暖化問題には積極的ではなかったが、ケリー長官はもはや気候変動は97%の科学者が認める事実でありいまでは外交政策の最優先課題だという。アメリカが紛争に介入するのではなく外交によってグローバルな課題に取り組むという姿勢はこれまでには見られなかったことであり、まさにケリー外交の真骨頂である。この新たな大量破壊兵器との闘いにはアメリカの力を発揮してもらいたいものである。
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