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2014-01-27 16:33
国際世論戦、敗北の一年
若林 洋介
学習塾経営
安倍首相の靖国参拝後、中国の反応は反日デモではなく、国際世論戦であった。昨年一年間、安倍首相の外交戦略の最大の問題は、国際世論戦で敗北し続けているという点にある。昨年一年間の海外有力紙の安倍首相に対する評価について振り返ってみれば、総じて「アベノミクス」についての高い評価と「歴史認識問題」についての厳しい批判が顕著な対照性を示している。安倍内閣成立時における「村山談話・河野談話の見直し」発言、昨年4月23日の「侵略の定義曖昧」発言、8月の麻生首相の「ナチスの手口」発言、そして米国の反対を押し切っての「靖国参拝」だ。これらの言動は、総じて国際世論から厳しく批判されている。これらの厳しい批判には、誤解も含まれてはいるが、安倍首相(と麻生副総理)が「ナショナリストである」という認識では、ほぼその見解が一致している。
ここで言う国際世論とは、米・英・仏・独・露など、G8の主要国の反応である。国際世論からの批判が厳しいということは、安倍首相が国際的に信用されていないということを意味している。どんなに経済政策において成功しても、国際社会において「ナショナリスト」の烙印を押された政治家は、決して信用されることはない。安倍首相は、昨年4月25日に幕張メッセにおいて迷彩服を着用して戦車に乗った写真の撮影を許したが、この写真は英国の「フィナンシャル・タイムズ」紙やドイツの「シュピーゲル」誌などに直ちに掲載された。たった1枚の写真だが、こういう1枚の写真がいかに国際世論の形成にマイナス効果をもたらすかを、安倍首相はまるでわかっていないようである。
昨年12月は、中国が一方的に「防空識別圏」を設定して、国際世論から厳しい批判を浴びたが、その直後の12月26日に安倍首相は靖国神社参拝を強行して「中国も中国だが、日本も日本だ」との雰囲気を国際社会に形成してしまった。12月4日の「フィナンシャル・タイムズ」紙は、「自己主張の強いナショナリストである習近平氏が率いる中国、同様に自己主張の強いナショナリストである安倍晋三氏が率いる日本、そして日本を防衛する条約を結んでいる米国、という国際環境を考えると、破滅的な紛争の危険が存在する」と述べた。このような見解が国際社会の共通した認識になりつつある。中国が、日本に対して国際世論戦を挑んで来たのは、このような状況の中においてである、ということになる。
安倍政権成立前までは「覇権主義の中国」vs「平和主義の日本」というイメージが、国際世論における共通な理解であった。それが安倍内閣成立から一年後の現状では「(危険な)覇権主義の中国」vs「(危険な)ナショナリズムの日本」という共通認識が定着してしまった。このような情勢認識の中から、「第一次世界大戦前夜」という悪夢のような噂話がささやかれるに至ったのである。安倍内閣の出現によって、日本は「平和主義の日本」から「(危険な)ナショナリズムの日本」へと変貌を遂げつつあるというのが、国際世論の共通認識である。「靖国参拝」問題は、日本における「(危険な)ナショナリズムの勃興」の一要素であるから、単なる対症療法としての「対中・世論戦」は、しないよりはマシという程度のものでしかない。問題の核心は「平和主義の日本」のイメージをいかにして回復するかということである。
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