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2014-01-17 23:17
内需担うのは中小企業、大企業にあらず
田村 秀男
ジャーナリスト
一昨年12月26日、「大胆な金融緩和」を掲げた第2次安倍晋三内閣が発足し、「アベノミクス」を打ち出した。その「第1の矢」、継続的に大量におカネを増発する日銀の量的緩和政策でマーケットは大きく反応し、円安・株高基調が続いてきた。これで雇用が増え、賃金も上がるならめでたし、めでたしだが、円安・株高の恩恵はこれまでのところ大企業にとどまっている。
製造業の営業利益と設備投資の各前年比増減率の最近の動向を、資本金1億円以上を「大手」、資本金1億円未満1000万円以上を「中小」とみなして比較すると、一目瞭然、一昨年10~12月期から大手企業は収益を大幅に伸ばしているのに対し、中小企業のほうは昨年1~3月期に少し持ち直した後は失速、悪化傾向にある。設備投資の方は大手が前年比マイナスを続けているのに対し、中小企業は7~9月期でプラスに転じた。
大手企業は円安のおかげで収益を大幅に好転させているが、国内投資には依然として慎重だ。対照的に中小企業の方は、円安に伴う原材料コストの上昇分を販売価格に転嫁できず、収益減に苦しんでいるが、今後のビジネス拡大に賭けて、国内投資を増やそうという機運が出始めている。大手が国内投資を増やさない理由としては、これまでの超円高とデフレによる内需の低迷で、中国など海外の製造拠点を増強し、そこから部品や製品を国内に輸入するビジネス・モデルに切り替えたことや、外需の低迷が挙げられる。量で見ると、輸出は東日本大震災後、最近に至るまで下落基調が止まっていない。輸入量は2010年初めから増加の一途をたどり、アベノミクス開始後は高水準のまま推移している。この結果、日本の貿易赤字は増加し続けている。
リーマン・ショック前までは、円安局面で輸出が増加し、自動車や電機など大手輸出業種が国内投資を増やす場面もあったが、今回、同じパターンが生じるとは言いがたい。日銀が12月16日に発表した短期経済観測によれば、大企業は13年度の設備投資計画を減額修正している。とすると、当面の景気の鍵を握るのは内需であり、規模別に言えば、大企業よりも中小企業である。内需に立ちはだかるのは4月の消費税増税だ。日銀の政策委員会の大勢は今年の消費者物価上昇率を、消費増税の影響分を含め3%前後とみているが、1年定期預金の利率は0・025%に過ぎない。インフレ分を勘案すると家計資産はかなり目減りする。おまけに住宅や自動車、家電など耐久消費財の需要は消費増税前の駆け込み需要から一転して大きく落ち込む。となると、公共投資を大幅に上積みして景気を押し上げるしかないが、建設業界の消化能力には限界がある。ならば、安倍政権は内需に貢献する中小企業への支援をもっと強化してよい。
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