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2014-01-14 20:21
真空を埋めるインドのしたたかなプレゼンス
川上 高司
拓殖大学教授
アフガニスタンのカルザイ大統領は、2014年以降の米軍の駐留に関する協定への署名を拒否し、アメリカとの関係に気まずい空気が生まれている。カルザイ大統領は米軍の対テロ政策である「拘束作戦」の停止を求めているが、アメリカ側が応じないため平行線を辿っている。
アフガニスタンでは米軍やNATOが撤退した後の治安の悪化を懸念する声が高い。アフガン軍はいまだ脆弱でタリバンが勢力を強めてきたらとても対抗できる力はない。だからこそ米軍が撤退したら力の真空が生まれ、タリバンが再び実権を握りかねない。それを防ぐには米軍の駐留が不可欠なのである。そのためには協定が必要である。しかしカルザイ大統領が強気なのは、実はインドの存在がある。カルザイ大統領はタリバンがアフガニスタンが実権を握っていた時代にインドに亡命していたことがあり、インドとの関係は良好である。タリバン崩壊後の復興事業でもインドの存在感は高まる一方でこれまでに20億ドルを投資している。一般市民の間でもインドは好感度が高い。
カルザイ大統領は力の真空をインドに埋めてもらいたいと考えているようである。アフガン軍の特殊部隊は、ここ数年インド陸軍の指導を受けている。彼らはインド軍に派遣されて訓練を積み、実力をつけつつあるという。なにしろインド軍はカシミール地域を抱えている。カシミールは過去には熾烈なテロの頻発する地域でありいまでもパキスタン軍との小競り合いは続いている。長年の経験から生まれたインドの対テロ対策や対内乱対策は、アフガニスタンにはぴったりだ。インド軍の将軍によれば「カシミールに空爆は決して行わなわなかった。そのため市民の犠牲は最小限だし市民の怒りも買わない」からだ。空爆を行って地元の市民の怒りを買う米軍とは違うのだ、とアピールしている。
インドとアフガニスタンの軍事的関係は深まる一方だが、インドが唯一気がかりなりなのはパキスタンである。アフガニスタンとインドが親密になればパキスタンの不安が高まり緊張が生まれる可能性がある。そのためインドも軍事協力は慎重にならざるを得ないが、それでもアフガニスタンでの存在感を高めるのに余念がない。アメリカがアフガニスタンに派兵してまだほんの10年程度しか経っていない。この地域ではアメリカは新参者なのだと改めて思わずにはいられない。
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