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2013-12-27 14:11
日中関係の悪化と靖国参拝
若林 洋介
学習塾経営
靖国神社に祭られている英霊達は、日中戦争・太平洋戦争の犠牲者たちである。あの戦争がなぜこれほどまでに多くの犠牲者を生みだしたのか。それは日中戦争(シナ事変)を収拾することに失敗したからである。その結果が、対英米戦争にまで至らざるを得なくなったからである。つまりは、対中外交の失敗が、多くの日本国民を戦争に駆り立て、とんでもない犠牲者を生み出す結果になてしまったのである。近現代史を学べば、いかに対中外交が難しいものであるかがわかるはずである。日中戦争時代においても、蒋介石の反日教育・侮日教育は徹底したものであった。当時「蒋介石を相手にせず」という声明を出した近衛首相は、後になってその失敗を認めるに至ったが、時すでに遅しで、日中両国の相互不信感によって和平工作は実らなかった。
したがって、靖国に眠る英霊達は、当時の軍部・政治家ら日本の指導者達の対中外交の失敗の犠牲者でもあった。安倍首相の責任とは、日本国の首相として英霊達を慰霊するだけではなく、最も困難な対中外交にしっかりと取り組むことなのである。「英霊に対する慰霊」の名の下に対中外交を悪化させるというのなら、それはかえって英霊達の期待を裏切ることになる。安倍首相が「不戦の誓い」というのなら、現状においてそのためになすべきことは、「日中不戦の誓い」にほかならず、日中平和友好条約の精神の原点に戻ることでなければならない。
かつて、日中戦争が北支から中支まで拡大していった時、莫大な戦費負担の故に、陸軍内部においても収束論が出ていたが、時の陸軍首脳部は「十万の英霊達に申し訳が立たない」と言って、退却を拒否し、和平へのチャンスを失ってしまった。さらに、日本は、そのことによって対中関係だけではなく、対米英関係をも悪化させ、最終的に対米英戦争に突入するに至った。軍部が「英霊達に申し訳が立たない」といって、前進に前進を続けた結果、何倍も、何十倍もの犠牲者達が生み出され、その結果として今日靖国神社に二百数十万の英霊達が祭られるに至ったのである。
昨年12月末、安倍内閣が成立してからの、この1年間に、安倍首相は本気で日中関係の改善に努力したのだろうか。口を開けば、「対話の扉は開かれている」と言いながら、その安倍首相の口ぶりからは、「心の扉が閉ざされている」という印象をぬぐい得なかった。先月末の中国政府による防空識別圏の設定以来、日中関係は戦後最悪の危機的状況の中にある。これ以上の日中関係の悪化を防ぐために、安倍首相が靖国参拝を見送ったとしても、靖国の英霊達は十分に理解してくれたに違いない。そのような最中に強行されたのが、昨日(12月26日)の安倍首相による靖国参拝であった。残念でならない。
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