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2013-12-12 13:45
「特殊な状況」をめぐる米・アフガニスタンの対立
川上 高司
拓殖大学教授
「特殊な状況下」。いまこの言葉の定義をめぐって、アフガニスタンのカルザイ大統領とケリー国務長官は話し合いを進めている。米軍は2014年末までに米軍をアフガニスタンから撤退させるが、2014年以後も駐留するために両国の間で安全保障協定が話し合われている。その中で、カルザイ大統領が問題にしているのが「特殊な」の定義である。
米軍は、対テロ対策としてアフガニスタンでは「夜間急襲作戦」を継続して行っている。夜間にアフガニスタン人の民家を急襲し、居合わせた戦闘適性年齢の男性を全員拘束し連行して尋問するのである。さらにその民家に居住する女性を尋問して家族や親族の情報を聞き出しテロリストの特定や居場所の特定をするのに役立てる。その情報をもとに無人爆撃機で攻撃するのである。つまり「夜間急襲作戦」は対テロ作戦には欠かせないのである。その作戦を2014年後も合法的に行うためには協定に盛り込まなければならない。アメリカ側は「特殊な状況の下では民家に立ち入ることができる」という一文を盛り込むことと、米兵や米国民はアフガニスタンでは訴追されいないことを要求している。
これに対してカルザイ大統領はそもそも「特殊な状況」とは何を指すのか、はっきりさせたいと主張している。この定義があいまいなままでは「夜間急襲作戦」は歯止めがきかなくなる可能性が高い。「夜間急襲作戦」は、アフガニスタンではきわめて市民の反発が強く激しい反米感情を引き起こしている。それだけでなく米軍の作戦を許すカルザイ政権への市民の反発も強く政権を揺るがしかねないほどである。そのためカルザイ大統領は米国に対して夜間襲撃の停止を再三求めてきたが、米国は「たいへん有効な手段なので」とまったく応じていない。
アフガン軍はまだ脆弱で独自で治安を守ることが困難である。隣国パキスタンの干渉にも対抗できない。カルザイ大統領にとってはアメリカの力が必要であり安全保障協定は必要なのである。来年は大統領選挙が行われる。カルザイ大統領の再選は憲法上ありえず新しい大統領が誕生するが、カルザイ大統領のように親米派とは限らない。2014年以降もアメリカがアフガニスタンで影響力を維持するにはアフガニスタンとの協定を結んで関係を強化しなければならない。両者のせめぎあいは続く。
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