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2013-12-06 20:49
問われる米国の無人爆撃機による空爆
川上 高司
拓殖大学教授
11月1日、アメリカは無人爆撃機による空爆によってパキスタン部族地域のTTP(パキスタンタリバン)の指導者であるハキムラ・メスードを暗殺した。TTPは長年パキスタン政府への武力による反政府活動を続けている。軍や警察、市民を狙った自爆テロや爆弾テロで多くの人が犠牲になってきた。シャリフ政権は長引く闘争に終止符を打つべくTTPと和平交渉を始めようとしていた。そんな矢先に交渉相手が暗殺されてしまったのである。政府は和平交渉に影響はでないと強気の発言をしているが、TTPからの熾烈な報復が予想され、交渉は先行きが不透明になってきている。
また、パキスタンでは市民の間でも無人爆撃機による暗殺に対して抗議行動が広がり大規模な反米デモが起こり、シャリフ政権に対してアメリカの無人爆撃を止めさせるよう圧力をかけている。ただ、市民の怒りがメスード暗殺にあるのではない点には留意したい。TTPは多くの犠牲者を強いてきた冷酷な武装グループというイメージがありメスードの死を悲しむ市民はおそらくいない。彼らの怒りは無人爆撃そのもに向けられている。
つまり、アメリカの無人爆撃機をパキスタン内に飛行させることはすなわち主権の侵害であるというのがパキスタン人の主張である。そしてそれを黙認してきたアメリカに追従する政権への怒りである。前任のザルダリ大統領も無人爆撃機を黙認してきた。シャリフ大統領もオバマ大統領との会談で無人爆撃への理解を示している。いったい政府はどちらの味方だという不満がパキスタン国民の中で高まるのは当然だろう。
折しも人権団体から無人爆撃機による空爆が戦争犯罪にあたる場合があるという報告書が発表されており無人爆撃機への風当たりは強い。だがオバマ大統領は無人爆撃機を飛行停止させる気はないようである。無人爆撃機はパキスタンの反米感情を高めて内政を混乱させるだけでなく、両国の外交関係にも影響を与える。無人爆撃機を見直す必要があるのではないだろうか。
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