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2013-11-28 16:22
重鎮スコウクロフトの対イラン政策
川上 高司
拓殖大学教授
11月18日、上院ハリー・リード氏のもとに一通の信書が届いた。差出人は、ブレント・スコウクロフトとジビニュー・ブレジンスキーだった。ともにアメリカの外交政策を支えてきた重鎮である。信書の内容な次のようなものだった。「イランへの制裁を強化することは、イラン核問題の話合いを阻害することになる。是非強化は控えてもらいたい」。そして「今アメリカ大統領はイランと合意するという困難かつ歴史的な交渉の最中にある。議会はぜひ大統領に寄り添って欲しい」と議会の対イラン強硬路線を諫めた。
スコウクロフトとブレジンスキーは、国家安全保障担当補佐官として大統領に仕えたキャリアを持ち外交政策に精通している。そして今でも、アメリカ外交政策が誤った方向へ向かわないように忠言をはばからからない。前ブッシュ政権では、イラク戦争に反対を主張した。またラムズフェルド国防長官の後任に、愛弟子のゲイツ氏を送り込み、ネオコンを政権から駆逐して当時イランに対して強硬だった外交路線を正した。
オバマ大統領がシリア攻撃を決定したときは、テレビでインタビューに答え軍事攻撃に反対を主張した。そして、今はイランへの制裁強化に動く議会の強硬路線を止めようと動き始めたのである。アメリカがイランと宥和路線を進め合意を目指そうとしているが、イスラエルのネタニヤフ首相は「イラン攻撃も辞さない」姿勢で反発し、イラン制裁強化のため米議会に対して活発なロビー活動を推し進める。その動きにスコウクロフトは危機感を抱いた。議会も割れている。外交政策委員会のメンデレス委員長は、イスラエルよりで強硬派である。一方軍事委員会のレビン委員長や情報委員会委員長は宥和派で大統領を支持している。
スコウクロフトがなぜイランとの宥和を願うのか。信書によれば、イランとの宥和は「アメリカの国益にかなっており、当該地域に平和と安定をもたらす。もし今回の歴史的合意が失敗すれば核なき世界は遠のき戦争が増えるだろう。そしてアメリカは同盟国の信頼を失う」。アメリカの国益は何か。そして世界にとってなにが必要か。イデオロギーに左右されることなく純粋に国益を追求するこの安全保障担当補佐官なくしては、アメリカの外交政策は語れない。まさに重鎮中の重鎮である。
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