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2013-10-21 12:11
どうなる中小企業の不良債務37兆円
田村 秀男
ジャーナリスト
アベノミクスの成果は上々とみて、安倍晋三首相は来年4月から消費税率を8%に引き上げる。日経新聞は10月14日の朝刊1面特集記事で、「景気回復、裾野広がる 円安が設備投資に点火」とはやし立てた。しかし、巷の様子はかなり違う。知り合いの大手税理士事務所には、中小企業経営者から悲痛な相談が殺到している。「円安に伴う原材料高すら価格転嫁できないのに、消費増税分をどうやって販売価格に転嫁できるのか」「来年4月からの販売契約を結んだが、消費税率アップ分は認めてもらえなかった」などだ。
中小企業は全企業数のうち99・7%を占め、企業従業員の66%を雇用している。大企業はいわば富士山の頂上部分で、中小企業はその中腹から下の分厚い裾野を形成している。今局面でアベノミクスの日が差して輝いているのは頂上だけで、中腹から裾野は依然として暗い。消費増税の嵐の直撃を受けるのは中腹以下の企業層で、大企業はちゃんと分厚い雲の上にいられる。企業規模別の経常利益の前年比増減率をみると、一目瞭然、アベノミクスがスタートした今年1月以降、大企業は急速に収益を回復しているのに対し、中堅企業は4月以降に失速、中小企業はアベノミクスの恩恵を受けることなく沈みっぱなしだ。
アベノミクスがどうして大企業と中小企業の格差拡大を生んだのか。そもそもアベノミクスの成果とは、円安と、円安がもたらす株高である。円安は輸入原材料のコスト・アップを招いているが、大企業は価格交渉力が強くて、仕入れコストの上昇を最小限に抑え込む一方で、抑え切れない部分は販売価格に転嫁する。ところが、中小企業は仕入れ価格の値上がりを飲み込まされるうえに、販売価格を上げられない。しかも、大企業は輸出比率が高いので、円安に伴う収益増を満喫できる。中小企業の大半は内需中心なので、円安による原材料高の直撃を受ける。
この格差は消費増税によってさらに拡大し、中小企業の疲弊が進む。政府・与党も、3党合意で昨夏、消費増税法案を通した野田佳彦前政権の民主党も、増税が中小企業に及ぼす災厄に背を向けた。増税推進の政治家たちは、消費増税で社会保障のバラマキ財源ができて、有権者の支持を得られると計算したが、デフレを悪化させ、経済を支える中小企業とその従業員の苦境を無視したのである。大企業偏重の増税翼賛メディアも同罪だ。リーマン・ショック後の「中小企業金融円滑化法」で棚上げされてきた中小企業約40万社の不良債務(銀行にとっての不良債権)は総額で約37兆円にも上ると推計される。年8兆円の消費税増収の対価は、倍返しでは済まないだろう。
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