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2013-10-13 09:04
安倍首相の価値観外交に誤算はないか
若林 洋介
学習塾経営
昨年12月の安倍内閣の発足以来、安倍首相は、自らの戦略構想の下に積極的な首脳外交を展開して来た。安倍首相の戦略構想とは、日米同盟を基軸とした「価値観外交」であり「中国包囲網外交」である。安倍首相の思惑はどこまで成功しているのであろうか。ここ10ヶ月間の安倍外交の展開を振り返ってみると、4月23日の国会質疑における村山談話をめぐっての「侵略の定義は定まっていない」発言の波紋が非常に大きな影響を与えていることがわかる。この発言によって、米国世論では保守系・リベラル系共に、安倍首相バッシングが行われた。しかし、国会開会中にもかかわらず、この米国世論の安倍首相バッシングが日米関係に今後いかなる影響をもたらすのかという議論は、国会においてほとんどなされなかった。マスコミで一部報道はなされたが、国内的には大きな反響は無かった。
もともと「村山談話」「河野談話」の見直しは、安倍首相の持論である。「侵略の定義は定まっていない」発言に対する国際社会の反発は、決して誤解に基づくものではない。「戦後レジーム」からの脱却を目論む安倍首相にとっては、「村山・河野談話」の見直しは、高い国民的支持率を背景にしてなんとしても取り組むべき課題であったが、安倍首相の「ホンネ発言」に対する国際的な波紋は、非常に大きく、特に日米関係へも懸念材料を与えることになった。実際にも、最近来日したヘーゲル国防長官とケリー国務長官は、千鳥が淵の戦没者墓地に献花し、「靖国神社はずし」をアピールした。これは「歴史認識」問題に関する米国政府の安倍政権に対する明確な意思表示である。
米国は「世論の国」であるから、大統領をはじめとして、国務省のアジア政策担当者、連邦議会議員たちは、ニューヨーク・タイムス、ワシントン・ポスト、ウォール・ストリート・ジャーナルなどはしっかり眼を通している。そういう世論の動向に配慮しながら外交政策を進めていることは、この度のヘーゲル国防長官、ケリー国務長官の意思表示でも理解できる。米国政府は、核ミサイル問題で、日・米・韓の3国が結束して北朝鮮に対峙する政策を推進しようとしており、「これ以上の日韓関係の悪化は困る」という立場である。日本政府は、本気で日・韓・米の対北朝鮮シフトを築く気持ちがあるのかかを問われている。また日・米・韓の対北朝鮮シフトは、同時に対中国シフトにもなるはずであり、安倍首相の「価値観外交」=「中国包囲網外交」にとっても要となるはずのものであった。
韓国の喧伝する「従軍慰安婦問題」は歴史認識問題であると同時に「人権問題」でもあり、そこに韓国側の強みがある。米国政府及び米国国民に対して、「人権問題」で反論することは困難であるからである。ヘタに反論した場合、かえって傷を深くすることにもなりかねない。それは橋下大阪市長発言が米国・国務省報道官から批判されたことからもわかる。安倍首相の「価値観外交」が成功するかどうかは、日・韓・米の結束強化が実現できるかどうかにかかっているが、そのためには、「人権問題」「歴史認識問題」をしっかりクリアーすることができなくてはならない。現状においては、安倍首相のスタンスは、米国政府に不満を抱かせ、韓国政府も対中関係親密化に追いやっている。今月の15日からいよいよ臨時国会での論戦が開始される。安倍「価値観外交」の理想と現状について、しっかり議論してもらいたい。
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