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2013-09-27 06:52
企業には減税分の給与反映を“強制”せよ
杉浦 正章
政治評論家
景気の腰折れを防ぐために政府・自民党がひねり出した復興法人税廃止はアベノミクスを軌道に乗せるためにもやむを得ないだろう。ただし消費増税を大企業の優遇措置に使うという印象はどうしても残る。これを解消するには、対象企業に一部統制経済的な手法を導入しても、減税分の賃上げへの反映を強制するしかあるまい。賃上げへの反映があって初めて効果が生ずる減税措置であるからだ。企業は抵抗する可能性があるが、血税が企業の内部留保に回っては、経済効果は薄まる一方であり、しっかりした歯止めをかける必要がある。自民党税調に復興法人税の一年前倒し廃止を要請した政府側が、賃金への反映に疑問を呈したり、廃止めを批判しているのだから、苦肉の策であることは間違いない。財務相・麻生太郎が「俺のセンスではない」と述べれば、経産相・甘利明は「減税が本当に賃金に回るかどうかという思いは皆持っている」というのだからどうしようもない。しかし、消費税先延ばし論を自民党から一蹴された首相・安倍晋三は、いまや「デフレ脱却の鬼」(官房長官・菅義偉義)と化しており、法人減税実行でアベノミクスを死守する構えだ。ニューヨークの証券取引所での演説でも「投資を喚起するためにも、大胆な減税を断行する」と言明した。明らかに投資減税の拡充と復興法人税の廃止をまず実施し、これに続く本丸の法人実効税率の引き下げに攻め込む構えである。
この勢いを受けて自民党税制調査会長・野田毅は既に陥落している。9月22日に安倍から直接電話による説得を受け、ここで白旗を掲げたようだ。無理もない。逆らえば次期内閣改造での入閣のチャンスを確実に逸するからだ。従って、自民党税調が26日野田に取り扱いを一任したということは、前倒し実施をするということにつながる。大局的に見れば、確かに今の日本はアベノミクスを推進してゆくしかなく、安倍も民主党政権の時代より増額した25兆円の復興予算枠の堅持を表明しているのだから、それを信ずるしかあるまい。復興法人税を廃止しても、他から資金をひねり出すならば問題はない。福島選出議員が、閣僚まで含めて異論を唱えているのは、選挙区向けで無理もないが、固執しすぎると、日本経済の失速という復興自体への大打撃に発展することを肝に銘ずるべきだ。甘えた感情論を唱えているときではない。公明党もブレーキ役ばかり演じている。同党代表・山口那津男は口を開けば「国民の理解」と言うが、国民とは創価学会婦人部のことか。与党なら与党らしくすべきだ。
ただ、これまで儲けをどんどん内部留保してきた大企業への減税であることは、政府も心してかかる必要がある。減税対象は企業全体の27%に当たる約71万社だ。すべて法人税を払える優良企業だ。法人減税は1%で4000億円の減収となり、2%あまりを減税すれば1兆円の減税となる。企業に対する減税の総額は1兆6000億円規模となることが見込まれる。これをまた企業が貯金に回してしまう懸念がある。麻生は「企業に賃上げをやってくれと言う権限は自由主義経済社会ではあり得ない」と述べているが、そんなスジ論を言っているときではあるまい。たとえ統制経済的な色彩を帯びても、減税分をきっちり給与に回させる必要はあるのだ。
自民党副総裁・高村正彦が経団連会長の米倉弘昌に「賃上げにつながる道筋が見えないと国民の理解を得るのは難しい。一番大切なのは経済界の決意であり、『デフレから脱却するために賃上げする』という強い決意を示してほしい」と要請した。しかし米倉は、「雇用環境も良くなっており、今後、経済成長によって企業業績が改善されれば、必然的に賃金に反映されると考えている」と答えるにとどめた。「必然的に反映される」ではまるで他人事のようである。認識が足りない。このため政府・自民党内は具体的な歯止め策の検討に入った。甘利は企業に減税額の使い道を公表させる方針だ。減税分だけ給料が増えているかの公表を義務づけることを検討している。公表させれば、いくら何でも税金を内部留保しただけの企業はマスコミのやり玉に挙がるだろう。一方で、自民党税調は賃金を増やした企業の法人税を軽減する措置の対象拡大を決めた。現在、従業員の賃金を5%以上増やした企業の法人税を軽減している措置について、その対象を拡大する。具体的には、昨年度を基準に、従業員の賃金を、今年度と来年度は2%以上、再来年度は3%以上、そのあとの2年間は5%以上を増やした企業の法人税について、賃金の増加分の10%を軽減する。こうした硬軟両様の構えで減税の効果を上げる方針だ。既に安倍はボーナスアップを企業に求め、これに応じた企業も多く、よほどずるがしこい企業以外は減税を給与に反映させてゆくものとみられる。
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