ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2013-09-17 13:43
シリア問題解決への第1歩
川上 高司
拓殖大学教授
アメリカのシリアへの軍事行動がカウントダウンかと思われた時、ロシアのラブロフ外相が「米軍の軍事行動なしの条件で、ロシアはシリアの化学兵器放棄を説得する」と発表した。それに対してオバマ大統領は間髪を入れず提案を受け入れ、米国のシリアへの軍事攻撃は延期された。強硬姿勢を一転させたオバマ大統領は「外交努力を最大限尽くす」と述べ、一方で「軍事行動の可能性はゼロではない」と釘をさし、米露はシリアの化学兵器放棄に向けて動き出した。
アサド大統領もこのラブロフ外相の提案を受け入れ化学兵器禁止条約へ加盟し、その1カ月後にシリアの化学兵器を国際的な管理下に置くとした。今回のアメリカの一方的な軍事行動宣言は世界中の反発を買っていたが、結果的にシリアの化学兵器放棄と条約加盟を引き出したことは、アメリカとしては悪くない結果だろう。
早速ケリー国務長官とラブロフ外相は、延期されていたシリア国際会議(出席は米露だけとなったが)を開催した。12日に両者がスイスのジュネーブで会議に先立ち冒頭演説を行った。その際、ハプニングが起こった。ケリー長官は同時通訳の機器の不具合で、ラブロフ外相の最後の言葉が聞き取れなかった。ケリー長官は通訳に再度通訳を頼んだがそのときラブロフ外相がケリー長官に話しかけた。「ジョン、大丈夫だよ。そんなに心配することはない」。するとケリー長官は「おっと、その台詞はまだやや早いかな」と受け、笑顔に包まれて演説は終わった。
8月21日以来、世界を覆っていた緊張が溶けた瞬間だった。もちろんシリアの問題が解決したわけではない。難民は日々増え、失われつつある命は増える一方である。化学兵器の放棄に関しても一朝一夕で解決しない。だがこの数週間で世界中が、武力では問題は解決しないことを改めて認識し、叡智を尽くせば外交によって解決する道は開けるということを学んだ。多くの人がシリアの現状を知りシリアのことを考えた。シリア問題の解決に世界は取り組んでいかなくてはならない。
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
一覧へ戻る
総論稿数:4661本
東アジア共同体評議会