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2013-08-22 12:49
CIAがヒズボラに情報提供とは?
川上 高司
拓殖大学教授
7月中旬、ベイルートのヒズボラ支配地区でアルカイダと繋がりのあるグループがテロを計画しているとCIAからレバノンの軍情報部へ情報提供があったと米マックラチー電子版(7月15日付)が伝えた。この情報は軍情報部からヒズボラへ伝わり、ヒズボラ幹部もCIAからの情報提供があったことを認めたという。ただ情報が伝わった時点ではヒズボラはすでにその情報をつかんでいて、警備を強化し始めていた。
アメリカはヒズボラをテロ組織として指定しているので、ヒズボラに直接情報を提供することは当然ながらできない。そこでCIAは苦肉の策としてレバノン軍経由でヒズボラに「気をつけるように」と伝えたのである。ヒズボラはシリアのアサド大統領を支援しシリア政府軍にも友軍を送っている。アメリカは反政府側への武器支援を表明している。つまりアメリカは敵側に危険を知らせる情報を送ったことになる。送った情報の内容は、威力の強い爆弾がシリアからレバノンに密輸されたこと、自爆テロのターゲットがベイルート南部のシーア派地域であること、テロのターゲットはシーア派やヒズボラだけでなくロシア外交官などアサド大統領を支援する外国の外交官なども含まれるというものだった。
7月13日にレバノン軍が何名かのアラブ人を逮捕した際彼らは強力な爆弾を所持していたといい、自爆テロが計画されていたことは間違いないようである。レバノン軍はターゲットとされていた地域のパトロールを強化、ヒズボラも警備を強化するなどテロの封じ込めに動き、今のところ大規模なテロは起こっていない。なぜCIAがヒズボラに情報提供したのかCIAからのコメントはないが、ヒズボラ幹部は、ベイルートでヒズボラを狙ったテロが起こればレバノンにいるアメリカ人がヒズボラからの報復のターゲットとなることを恐れたのではないかと見ている。
シリアを巡っては、関与を主張するケリー国務長官と関与を否定するヘーゲル国防長官が政権内で対立している。さらにシリア自由軍への武器支援に関してはアメリカ議会が強く反発していてアメリカの対シリア政策は方向を見失っているように見える。それは逆に言えばそれほどにシリアを巡る中東情勢は複雑で一筋縄ではいかないということだろう。それはつきつめていけば、シリアにおけるアメリカの国益は何かということである。それだけではない。シリアでは市民の犠牲者が増える一方でそのうえ難民も日々増えている。人道的に放置できないというプレッシャーが国際社会からアメリカにかかる。しかも国家安全保障担当補佐官は人権タカ派のスーザン・ライス、国連大使も人権タカ派のサマンサ・パワーである。アメリカがどのような外交政策を立てるのか、オバマ大統領の最大の試練の時であろう。
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