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2013-08-16 13:47
米国撤退後のアフガン海兵隊基地の行方
川上 高司
拓殖大学教授
国防総省は予算削減をめぐって議会と闘いを繰り広げているが、議会が要求する削減が実施されれば米軍の能力の低下を招くと長官も軍部も必至に抵抗している。ヘーゲル国防長官は上院軍事委員会に宛てた手紙の中で、国防費の強制的削減をするならば船舶や航空機を購入しないまでだと反撃に出た。国防企業との繋がりをもつ議員は多い。ペンタゴンが購入を停止すれば国防企業にとってはダメージが大きい。当然ながらロビー活動や圧力となって議員に跳ね返ってきて議員は困る。この流れを国防長官はさすがによくわかっていて、脅しともとれる反撃に出たのである。
一方で、大いなる無駄な歳出は相変わらず続いており、そのような無駄の削減こそが予算カットの論議の前になされるべきであろう。たとえば最近、アフガニスタンのヘルマンド地方に巨大な海兵隊の司令部基地が完成まで間近となっている。この基地は「キャンプ・レザーネック」(レザーネックは海兵隊を指す別称)と命名された、海兵隊将軍が「わが軍が世界に有する基地の中でも最高ランク」とあきれるほどの立派な基地である。なにしろその面積はCENTCOMの司令部基地にも匹敵するという。1500人を収容できる建物、立派な会議室、強力な自家発電装置と空調設備は3年の月日と3400万ドルをかけて建設された。問題はただ1つ、誰も使う予定がないということである。
アフガニスタンでは2014年の撤退に向けて引っ越しが始まっており、このヘルマンド地方でも2万人が駐留していたが昨年には7000人に縮小、司令部にいたってはせいぜい400人である。この先はゼロになる。発端は2009年、オバマ政権の増派の決定を受けて陸軍はヘルマンドに巨大な海兵隊の基地建設を思い立った。当時の海兵隊司令官は「マリーンの司令部はバラック小屋で十分」と建設に反対した。もともと常に予算が削られている海兵隊は質素倹約に徹している。ぜいたくは敵というのがマリーンなのだ。
だがこのときはなぜか予算が認められてイギリスの建設業者が請け負って建設が始まった。海兵隊司令官は再三建設の中止を申し入れたが動き始めたプランは止まることなく、今年の春になってようやく中止となった。アフガン復興の監査官が「アフガニスタンで最高の建築物だが、残念ながら利用者がゼロで無駄の象徴」とヘーゲル長官に報告したのである。立派な基地の残された道は2つしかない。取り壊しかアフガン軍に寄贈するかのどちらかだ。だが、建物があっても維持管理のコストが高いためとてもアフガン軍では維持できない。おそらく未使用のまま基地は取り壊しの可能性が高いが、 先の監査官は「二度とこんなことが起こらないようにしてもらいたい」と長官に戒めの言葉を送った。議会の予算削減への抵抗と無駄な歳出の削減のリバランスが国防長官に求められている。
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