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2013-06-20 06:10
都議選敗北前に責任転嫁に出た石原
杉浦 正章
政治評論家
後ろ足で砂をかけたり、庇(ひさし)を借りて母屋を取ったり。政治家の醜い争いは散々目にしてきたが、これほど露骨なケースは初めてだ。維新を「慰安婦是認政党」と印象づけ、支持率の急落を招いたことは、紛れもなく共同代表の橋下徹と石原慎太郎の共同責任である。それにもかかわらず、ここにきて石原は、橋下1人に責任をなすりつけ、辞任を求めている。都議選惨敗必至となって、責任を転嫁しようとしているのだ。いまや維新は賞味期限切れから腐乱状態へと移行した。分裂どころか、解党すべき状況にある。石原の橋下に対する発言は、憎々しさに満ちあふれている。まず「終わったね、この人。俺が3分話すと、10分も答弁する」とこき下ろした。そして「『どの国の軍隊も慰安婦を活用していた。なんで日本だけとがめられるんだ』というのは、それはそれで彼の意見だけど、 それを言ってはおしまいだね」と、橋下の慰安婦是認論を批判した。
その上で「こうなった責任は橋下君にある。橋下君の去就は自身が大局を考えて決めることだ」とあからさまに辞任を要求した。「いくら何でも、それはないのではないか」と言いたいのは、経緯を知る多くの国民だろう。石原はついこの間まで「軍と買春はつきもので、歴史の原則みたいなものだ。彼はそんなに間違ったことは言っていない」と“完全擁護”に回っていたではないか。これが橋下の米軍への「買春のすすめ」もあって、維新を「慰安婦是認政党」と印象付けてきたのである。君子でもないのに石原が豹変した理由はどこにあるのだろうか。まず第一に6月23日投開票の都議選の大敗退が確定的となったことが挙げられる。遅まきながら石原にも分かったのだ。橋下発言以前は、15議席は上回ると予想されていた。それが今は、せいぜい現職からの転入組が1人か2人当落線上に上がっていて、新人はすべて泡沫並みという状況だ。
石原は13年余りも都知事を務めて、チヤホヤされた結果“気位”だけは人一倍高い。そのお膝元である都議選大敗北ほど石原の自尊心を傷つけるものはないのだ。だからこの際、敗北を橋下の一身に背負わせようと、早めの“責任転嫁”に打って出たのだ。都議選敗北の責任は、橋下発言もさることながら、東京に常在する共同代表の石原の責任の方が誰が見ても大きい。それにもかかわらず、他人のせいにする。大言壮語の割りにはあまりに人間の卑小さを感じさせる行動だ。今この時点で「橋下切り」に出た理由はもう一つある。それは参院選に向けての“悪あがき”だ。参院選も自民党の世論調査などによると維新の一ケタ台前半説が濃厚だ。橋下が居座れば居座るほど、敗北が確定的なものとなる。そう感じた石原は、橋下に都議選直後の辞任を促しているのだ。これに対して橋下は、なぜかいつもの強弁さがみられない。「いま選挙中で敵は外。内部でエネルギーを割く場合ではない」と石原を一応たしなめながらも、「都議選が駄目でも、参院選で審判を受けたいという思いがあるが、党のメンバーから駄目だと言われれば辞めなければいけない」と都議選後の辞任に言及した。
こうした石原と橋下の確執は、筆者が昨年から「双頭のヘビは小枝に引っかかって死ぬ」と予言したとおりの流れになって来たことを意味する。大阪と東京の確執は、はからずも橋下の言う「敵前」で露呈したのである。この維新の内乱というか“共食い”は大阪方の反発もあり、まだ二幕も三幕もあるだろう。幹事長・松井一郎は「橋下という政治家は維新に必要。責任は取る必要ない」と反発している。都議選を契機に分裂指向をたどる可能性もある。根本には大阪漫才のようなポピュリズムを全国規模に拡大しようとしても無理があるということだ。全国レベルの政党になるにはもっと「知性」が必要だ。石原も維新を利用して首相になれると判断したのが決定的な誤算であった。石原の所属したかつての自民党の極右集団・青嵐会で首相になり得たのは渡辺美智雄くらいのもので、あとは野武士集団だった。石原の邪な権力欲はその晩節を汚そうとしている。
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