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2013-06-17 05:43
政権高支持率の“岩盤”は外交・安保にある
杉浦 正章
政治評論家
安倍政権の支持率は微減の傾向が見られるものの、依然として内閣、自民党とも高水準を維持している。その背景はどこにあるのか。この支持率は参院選に反映できるのだろうか。その疑問に答えれば、まず第一に言うまでもないが、安倍政権による景気回復への期待感があげられる。国民はアベノミクスがたとえ「夢」でも、すがりたい気持ちであろう。これは成否が実証されるまでは維持できる可能性がある。もう一つ、マスコミの支持率分析が完全に見落としている点がある。それは「外交・安保」での支持だ。これが今はやりの用語で言えば“岩盤”のように固いのだ。政権支持率は最新の読売の調査でも、内閣支持率67%と政権発足時を上回っている。政党への投票先も、自民党が44%で断トツ。以下民主7%、公明5%、維新5%と大きく差をつけている。株価の乱高下には大きな影響を受けていない。その傾向を分析すれば、第一に「敵失」がある。自民党が「夢」を語っているのに対して、民主党政権は3年間「嘘」を語りまくった。自民党の「夢」のしゃぼん玉はいつかは弾けるかも知れないが、弾けないかも知れない。少なくとも国民は「夢」を持ち続けることができる。民主党はすべての政策に「答え」を出せないまま終わったが、自民党はまだ「答え」が出るには間がある。
一方で、民主党の語った「嘘」はすべて馬脚が現れた。財源で16.8兆円がすぐにでも出てくるとついた虚言は、政権担当直後からできないと判明した。そもそも政権の発想に「景気対策」などという言葉が存在しなかったのが民主党であり、安倍は総選挙前から景気対策を打ち出し、これが市場の好感を得て株価上昇につながった。今は乱高下しているが、政権にとって有利なのは、世界の株価の下落傾向はアベノミクスの成長戦略ではなく、米国の金融緩和維持への不安感から生じている色彩が濃厚である点だ。こうしてアベノミクスは、恐らく参院選前に「崩壊」とか「馬脚」とか言う言葉で形容されることはない見通しとなった。もちろん野党は批判発言を繰り返すであろうが、鳩山に次ぐ「ルーピー」さを感じさせる民主党代表・海江田万里がいくら言っても、説得力は生じない。これに加えて、冒頭述べたように外交・安保要因が強く作用する“岩盤”支持層がある。これも「敵失」が大きく影響している。というのも、外交で民主党政権がついた「嘘」は数知れないからだ。首相・安倍晋三は6月16日付のフェイスブックで「『民主党は息を吐く様に嘘をつく』との批評が聞こえて来そうです」と批判したが、確かである。超大型の嘘を上げればまず、尖閣列島における漁船衝突事件で船長を釈放した際の嘘である。官邸の大きな判断に基づくものであるのに、一地方検事の判断のせいにした。直ちに看破されたのは言うまでもない。さらに普天間移転で鳩山は3回も嘘を重ねている。「トラストミー」でオバマをだまし、「腹案がある」で国民をだまし、最後には大嘘の「最低でも県外」でずっこけた。
このような民主党政権に辟易(へきえき)したのが国民であり、もう外交安保では金輪際民主党など信用しないと固まってしまったのだ。この国民の志向をさらに後押しするのが、中国、北朝鮮、韓国による反日的な動きである。国民は船長釈放で歯ぎしりし、李明博の竹島上陸で憤慨し、北の核とミサイルで激怒しているにもかかわらず、民主党政権はその激怒を甘く見ていた。何ら国民の怒りを発散させようとはしなかった。これに対して、右寄りの安倍政権が成立して、小気味よく怒りを吸収し始めたのだ。尖閣では一切の妥協を排除し、韓国に対しても譲歩を示さず、北には隠密外交をもくろんで、すくなくとも米韓ができなかった緊張緩和の役目を演じた。米中首脳会談に先だって、米国には中国の“核心的利益”に目を向けるより、日本の“領土権”の主張に目を向けるよう、オバマに申し入れた。これを受けてかオバマは「同盟国が脅迫されているのを見過ごすわけにはいかない」と言明、国民は胸がすく感情を久しぶりに味わったのだ。
このように安倍政権は内政においても外交においても民主党政権への“逆張り”で成功を収めているのだ。安倍政権の持ち味は政策もさることながら、民主党には全くなかった、国民の「心」を揺さぶる戦略が見られることだ。経済では“やる気”を出させ、外交では“愛国心”をかきたてる手法である。「心」は弄ばれると反動が大きいが、今のところそれを感じさせない。安倍の言動も、民主党の政治家ならポピュリズム志向を非難されるであろうが、持ち前の誠実さと「他意のなさ」が前面に出る故か、ポピュリズム批判にはならない。こうしてアベノミクスは液状化がありうる地盤の上に成り立ってはいるが、外交・安保は固い岩盤の上にあり、高支持率のまま参院選になだれ込もうとしているのであろう。
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