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2013-05-12 12:22
韓国が円安に脅える本当の理由
田村 秀男
ジャーナリスト
「アベノミクス」による脱デフレのための大胆な金融緩和政策と、それに伴う円高是正は世界にとってもいいことだと、米英当局や国際通貨基金(IMF)、世界銀行が評価している。「WIN-WIN」(共栄)をもたらすというわけだが、二国間関係にとってみるとそう受け取られるとはかぎらない。韓国に至っては「近隣窮乏化」だと反発する声が極めて強い。世銀が15日に発表した「東アジア・大洋州地域経済報告書」は円高是正を東アジア全体の利益になると論じているが、こと韓国に関する限り、「短期的には日本からの競争圧力を受ける」とマイナス面を指摘している。電子製品や自動車などで日本と競合するからだが、それはあまりにも皮相な見方ではないか。
韓国経済が円高是正や円安により打撃を受けるのは、同国経済が外資に依存しすぎているからである。2007年夏の米サブプライム・ローン(低所得者向け住宅融資)危機勃発、さらに翌年9月のリーマン・ショックを受けて外国勢が韓国株を実に3分の2近く売り逃げ、ウォンは暴落した。ところが、日本では逆に超円高局面に突入し、韓国企業は一転して対日競争力で優位に立った。そこで、外国投資家は日本株を売って韓国株の再取得に動き、韓国株価は上昇し、日本株は下がり続けた。
外国投資家の韓国株保有残高は12年末には07年のピーク時を上回り、韓国国内総生産(GDP)比で31・8%(日本は14%弱)に上る。韓国は1997、98年のアジア通貨危機後、逃げ足の速い短期借り入れへの依存を減らしてきたが、それでも短期債務はGDPの11%(97年は15%)と依然高水準にある。外資動向に制約された韓国は金融政策の機動性を失った。円安でサムスンや現代自動車などが海外市場で日本のソニーやトヨタ自動車にシェアを奪われる、というなら、日本に対抗してウォン相場を安くする政策をとればよい。外国為替市場でウォン売り介入すると為替操作になるので限度があるが、金利を大幅に下げればウォンは安くなる。
ところが、金利引き下げと急激なウォン安は外国の金融機関を動揺させ、融資引き揚げとさらなるウォン安につながる。すると株式市場に伝播し外国投資家は韓国株売りに転じるかもしれない。アジア危機当時や07~08年に起きた大量の外貨流出の悪夢が再び起きかねない。リーマン後はそれでも、日本の民主党前政権と白川方明前総裁の日銀が円高容認政策をとったので、外国投資家は対日競争力優位にある韓国の企業に投資し、韓国経済は好循環に恵まれた。ところが、今回は異次元緩和の黒田日銀政策のために、ウォンはドルに対して多少安くしても円安には追いつけそうにない。韓国としてはともかく、円安を止めてもらわないことには、先行き展望が開けないのである。
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