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2013-04-16 10:10
ムシャラフはブット女史と同じ道を辿るのか?
川上 高司
拓殖大学教授
3月24日朝、4年間の逃亡生活を終えてムシャラフ元大統領がパキスタンに戻ってきた。2001年以来ブッシュ前政権の「テロとの闘い」の最前線としてアメリカに協力して親米路線をとっていたが、その親米路線にイスラム過激派や国境地帯での反発が高まりパキスタン国内は政情不安になった。そのためムシャラフは国境地帯へ配慮してアメリカの望む通りの政策をとらなくなったため、ブッシュ政権はムシャラフを見限りそのためムシャラフは大統領の座を追われ2009年に国外へ逃亡した。ブッシュ政権は、故ブナジール・ブット女史の夫のザルダリを大統領として後押ししてパキスタンの親米政権を維持した。
ムシャラフは逃亡後「数年して帰国する」と宣言していたが帰国すれば暗殺の脅威が高いことから周囲に説得されて見送り4年が経過していた。そして大統領選挙が近づくとムシャラフは再び帰国を表明し、今回はさっさとパキスタンの地に降り立ってしまった。ムシャラフの帰国に対してパキスタンタリバンは「暗殺する」と宣言し、パキスタンの司法当局はブット女史の暗殺の責任を追及する構えを見せている。つまり政治的にも身体的にもまさに危機にあるにもかかわらず「パキスタンを救うために」帰国したムシャラフの決意は堅い。かつてアメリカに亡命していたブット女史も、吹き荒れるテロにパキスタンの国家的危機を感じて暗殺の脅威があったにもかかわらず帰国した。ムシャラフもまた、いっそう吹き荒れるイスラム過激派のテロ、シーア派とスンニ派の対立に揺れるパキスタンの惨状に国家的危機を感じて帰国した。彼はブット女史の暗殺の責任を問われているが、期せずしてブット女史と同じ道を辿っている。
ムシャラフの帰国が果たしてパキスタンを惨状から救うことになるのか、いっそう混乱を引き起こすのかはわからない。今後アメリカがどのようにパキスタンに関与するのか、その姿勢によってパキスタンの政治に与える影響は小さくない。ケリー国務長官は24日アンマンでパキスタンの陸軍参謀長と会合をした。パキスタンでは伝統的に軍部の力が強く、ムシャラフも以前は参謀長の地位にあった。ケリー国務長官のこの会談が軍部を重視していることの現れとするならば、ザルダリ大統領もまたオバマ政権に見捨てられたということだろう。
パキスタンは中国との関係も深めており、アジア・タイムス電子版3月31日付によれば、グワダール港の運営は中国に委ねることに決定しさらにイランの天然ガスを輸送するパイプラインの建設は中国の支援で賄うという。現在のパキスタンは、シーア派とスンニ派のあつれきが高まり、シーア派を狙ったテロが増えている。さらにアフガニスタンとの国境地帯は相変わらず不安定である。アフガニスタンからの撤退は、パキスタンの安定が鍵を握っている。一筋縄ではいかないパキスタンを相手にどう交渉するのか。オバマ政権の対パキスタン外交に注目したい。
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