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2013-04-09 13:17
スマートパワーを駆使するオバマ外交
川上 高司
拓殖大学教授
オバマ大統領が大統領就任2期目の最初に選んだ訪問国は、イスラエルであった。オバマのイスラエル訪問の狙いは、トルコとイスラエル関係を修復させ中東地域を安定(rebalance)させることにあった。イスラエルとトルコは、2010年5月イスラエル軍がガザへの支援物資を搭載したトルコの船舶を急襲、9人のトルコ人が死亡する事件があって以来関係が3年に渡り冷え切っていた。オバマ大統領はトルコへの謝罪をしぶるネタニヤフ・イスラエル首相に謝罪させたのだ。
オバマ大統領はイスラエルの空港から出発する直前にトルコのエルドガン首相に電話をかけ、その電話をそのまま有無を言わさずネタニヤフ首相に渡した。ネタニヤフ首相はその電話でしぶしぶエルドガン首相に2010年の事件を謝罪し、遺族への補償問題に取り組むことを約束した(3月22日付イスラエルのメディア)。その謝罪をエルドガン首相は受け入れた。そうして、3年にわたる冷たい関係はここに終焉することになる。ネタニヤフ首相がこのドラマチックな電話に対して心の準備があったのかまったくの不意打ちだったのかはわからないが、オバマ大統領から関係改善に関して訪問中にプレッシャーがあったことは間違いなく、「困難な決断だったが謝罪は避けられないことだった」とネタニヤフ首相は閣僚たちに説明したという。
3年間の不仲がわずか20分の電話で解決したが、その20分のためには周到な根回しが行われていた。3月上旬にケリー長官がトルコを訪れてトルコ外相とイスラエルとの関係について話し合い、関係改善の道筋をつけていたのである。そしてオバマ大統領のだめ押しである。トルコとイスラエルの関係改善はこの地域にとっては大きな意味を持つ。電話ではネタニヤフ首相とエルドガン首相はガザ地区について人道的な見地から協力していくことで一致した。すぐにパレスチナの問題が解決するわけではいが、不安定な中東で頭痛の種がひとつ減ったことはオバマ大統領にとっても歓迎すべきことだろう。
今回のイスラエル訪問は外交に長けたケリー国務長官とオバマ大統領の見事なスマートパワーの使い方のお手本のようなもので、「4人組(オバマ大統領、バイデン副大統領、ケリー国務長官、ヘーゲル国防長官)」の息のあったところをいかんなく発揮している。実にあざやかで手強い交渉相手である。
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