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2013-03-30 12:08
東アジアにおける高齢化問題対処の重要性
菊池 誉名
日本国際フォーラム主任研究員
さる3月27日、国立社会保障・人口問題研究所は「日本では、2040年に65歳以上の人口が40%以上を占める自治体が半数近くに増加する」との推計を発表した。この推計は、同日夜の複数のニュース番組でも取り上げられ、波紋を呼んだが、現在日本が経験してきた以上の急速なペースで高齢化が進み、かつそのための対策も十分に行われていないのが、中国やASEANといった東アジア諸国である。少子高齢化への対応において先鞭をつける日本は、この地域において問題解決のためのイニシアチブをとり、各国に持続可能な高齢化社会のモデルを提示できるよう努めていくべきである。なぜなら、少子高齢化は、放置すれば、経済成長を低下させ、日本を含む東アジアの繁栄を停滞させるからである。
東アジア諸国は、1960年代後半以降、生産年齢人口の増加によって成長に恩恵をもたらす「人口ボーナス」期にあり、それを背景として経済成長を遂げてきた。加えて、中国やASEANなどの東アジア諸国は、79年の中越戦争を最後に、比較的安定した国家間関係を維持することができたため、日本や欧州からの積極的な直接投資を受けることできた。それら2つの要因が重なって、東アジアは奇跡的ともいえる急激な経済成長を成し遂げることができたのである。
しかし、現在、国連などの統計によれば、中国やASEANは、生産年齢人口が減少し、老年人口だけが急激に増大していく「人口オーナス」期に入り始めており、2040年頃にはそのピークが訪れると予測されている。特に問題なのは、中国やASEANにおける「人口オーナス」への移行が、欧米や日本が経験したよりもはるかに早いペースで進行していることである。その結果、日本や欧米では、国民の所得水準が十分に高まった段階で少子高齢化社会をむかえているが、中国やASEANでは、国民に十分な所得分配がなされる前に少子高齢化社会となり、経済成長が止まる可能性がある。その場合、格差の拡大などにより、社会情勢の悪化、財政破綻などによる経済危機などが引き起こされる可能性もある。そうなれば、経済的な相互依存関係にある東アジアは、全体として深刻な影響を受けることになる。
現在、少子高齢化への対処方法として、規制緩和、技術開発、高齢労働者の再活用などがいわれているが、特に重要といわれているのが社会保障制度の整備である。こうした分野において、日本は、厚生労働省が中心になってASEANと社会保障ハイレベル会合などを続けており、国家間の協力体制についての議論を深めている。他方、中国では社会保障制度が十分に整備されておらず、今後はこうした協力体制の枠組みを、中国にも拡大していく必要がある。ただいずれにしても、現時点において、国際社会では少子高齢化問題への抜本的な解決を見出せていはいない。そのため、同問題において、東アジア地域で先頭を行く日本が、イニシアチブをとって対策を協議、調整するなどして、持続可能な高齢化社会モデルを示していくことが必要である。今後日本は、同問題に関する研究や対話などで域内各国をリードし、東アジアにおける協力体制を深めていくべきである。
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