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2013-03-13 07:04
角栄流アナログ選挙に“逆張り”の勧め
杉浦 正章
政治評論家
ネット選挙がいよいよ実現することになって、自民党参院議員を中心に動揺が走っている。推進者の首相・安倍晋三は「自民党に絶対有利」と、参院側を説得しているが果たしてそうか。筆者はネット選挙に血道を上げたりすれば、落選必至と言っておく。ご先祖様からの固い選挙地盤を受け継いで、選挙に心配の要らないぼんぼん首相の言うことなどを聞いてはならない。ここは逆張りで、デジタル選挙などには専念せず、アナログ選挙に徹することだ。ネットなどへのエネルギー投入は3%でいい。当選したいなら、ネットはポスター程度と心得て、ネットにエネルギーを割く“机上の空論”選挙を展開してはならない。いまこそ田中角栄流の有権者と肌で接する選挙を展開することだ。 自民党は3月12日、インターネットによる選挙運動を参院選から解禁する公職選挙法改正案を了承した。13日に自民、公明、維新3党で衆院に共同提出、成立は確実である。これによりホームページ、ツイッター、フェイスブックなどを選挙期間中も利用できるようになるうえに、電子メールによる選挙運動は政党と候補者に限定して実施される。よく誤解している向きがいるが、あくまでネット上の選挙運動であり、ネット投票ではない。候補にとっては選挙運動の革命であり、自らの意思伝達は無限の可能性を秘めることになる。逆に、西部劇と同じで、ネット選挙は無法地帯が現出される側面もあり、なりすましや当て逃げのような誹謗中傷、悪名高き中国軍部などによるサイバー攻撃もあり得ると見なければならない。
政権は安倍が前のめりになってネット選挙推進者である。しかし、自らの人気がネトウヨ(ネット右翼)に支えられているからといって、全党的に通用するかといえば、極めて難しいと言わざるをえない。幹事長・石破茂は前々回の総選挙に惨敗したことについて、「小沢さんの田中角栄選挙に負けた」と述べている。自らも田中の薫陶を受けたことがあるだけに、見るところを見ている。田中の選挙は、ネット選挙、つまりデジタル選挙とはほど遠いアナログ選挙である。田中発言からその“極意”とネット選挙の違いを分析すれば、次のようになる。
★「戸別訪問は3万軒、辻説法は5万回やれ。2万人と握手をして廻れ」。この発言は選挙の要諦はまずスキンシップであると言うことだ。有権者と直接会うことは、自らの人となり、人柄を伝達する手段であり、これがメールで代用できると思ったら、大間違いだ。最近のメールは動画も送れるし、演説を映像にして送ることも可能だ。ところが致命的欠陥は、有権者が有り難く思わないことだ。他人に話すのと同じ事をメールで送りつけられたからと言って、喜ぶわけはない。筆者なら候補者のメールは自動的に迷惑メールに指定してゴミ箱に捨てる。
★「選挙民が何を一番望んでいるのか、何に一番困っているのかを、他の誰よりも早くつかまなきゃいかん。とにかく歩け、歩いて話を聞け」。要するにフィードバックだ。一方的な伝達だけでは政治家の勤めは果たせない。選挙運動は具体的な選挙民のニーズを取り込む絶好のチャンスと捉えるべきだというのだ。ネットの一方通行では、最先端のニーズを掌握出来ないのだ。
★「選挙区は一軒一軒しらみつぶしに歩け。靴を何足も履きつぶせ。雨の日も風の日も歩け」。田中は人が人と会って弾け飛ぶ感動を何よりも大事にした。いくらフェイスブックやブログやツイッターを活用しても、感動する文章や呼びかけをすることは容易ではない。感動があってこその得票と心得るべきだというのだ。パソコンでしこしこ伝える自己宣伝には感動はない。
★「3分でも5分でも辻立ちして自分の信念を語れ。それを繰り返せ。それしかない。山の向うを見ていても援軍は来ない。聴衆の数で手抜きはするな」。辻立ちとは何かと言えば、選挙民に自らの存在を示すことだ。辻立ちしたからと言って、話を聞いてくれるとは限らない。田中は「昨日も今日も立っていたなぁと思ってくれるだけでいい」と漏らしていたが、有権者の頭の片隅に残っていればいいのだ。ネットでの演説などは、NHKの候補者演説と同じで、瞬時に切られる。前首相・野田佳彦が忠実に田中の教えを守って辻立ちし、1回の落選もないのがその効果を物語る。
★「いいか、演説というのはな、原稿を読むようなものでは駄目だ。聴衆は、初めから終わりまで集中して聞いていない。きっちりとした起承転結の話をしても、駄目なんだ。聴衆の顔を見て、関心のありそうな話をしろ。30分か1時間の演説の中で、何か一つ印象に残るような話をもって帰ってもらえばいいんだ」。これも要諦だ。何か一つだけ面白い話しを記憶させる。これも聴衆と接して「顔を見て」こそ分かる話だ。ネット上の理路整然とした“机上の空論”で票が集まると思ったら大間違いだ。
要するに、ネット選挙を過信などしていたら落選間違いないと繰り返しておく。やるなら沖縄担当相・山本一太が前からやっているように、自ら車や電車の中でも休憩時間中でもひまさえあれば書いて書いて書きまくり、常に一定の有権者を引きつけておくことだ。それもあくまでアナログ選挙の補完としての位置づけだ。米大統領オバマはネット選挙を活用したが、実際には有権者との接触を何よりも重要視しており、ネット選挙がすべてであったわけではない。
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