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2013-03-04 12:03
テロが頻発するパキスタン
川上 高司
拓殖大学教授
2月17日、パキスタン南部の大都市クエッタの市場で自爆テロが発生し少なくとも81人が死亡するという惨事が発生した。現場となった市場はシーア派ハザレ人の居住地であり、多くのハザレ人が巻き込まれ日曜日の買い物に出かけていた女性やこどもも多く巻き込まれた。ハザレ人はアフガニスタンの中部に住み、スンニ派民族に囲まれてひっそりと暮らしているシーア派である。パキスタンのバロシェスタン地域はシーア派が多くハザレ人も住み着いている。今回のテロはそのシーア派を明らかに狙ったテロで、スンニ派過激派組織がすでに犯行声明を出している。
1か月ほどまえにもクエッタでは爆弾テロが起こっており、このときもシーア派が集まる地域が狙われた。パキスタンではスンニ派によるシーア派への暴力行為がエスカレートしつつある。それに対して「ザルダリ政権はなにもしない」とシーア派からは不満の声があがっている。今回のテロが起こると遺族を含むシーア派の住民たちは76時間の座り込みを始めて政府への抗議行動を起こし、一刻も早く実行犯を逮捕するように要求している。
アルジャジーラによれば、ハザレ人を狙ったテロで犠牲になったのは昨年一年間で400人を超える最悪の数字を記録したという。だが今年にはいってすでに200人を超える犠牲者が出ており宗派闘争の激化は明らかである。テロのほとんどがこのバロシェスタン地方で起こっており、政府が有効な対策を早急に立てなければシーア派とスンニ派の闘争が壮絶なものになりかねない。イラクでかつて起こった熾烈な宗派闘争もまだ完全に収束したとはいいがたく、イラクでは同日シーア派を狙った爆弾テロがバグダッドのシーア派居住区域で発生し多くの死傷者が出ている。
シリアでもシーア派のアサド政権とスンニ派の反体制派の闘争は、一向に終わりが見えない厳しい状況にある。シリアからパキスタンまで宗派闘争が拡大・激化すればまさにその中心にあるアフガニスタンの情勢も不安定になっていく。まるでアメリカの撤退を見越して過激派の動きが始まっているかのようである。地域の安定をどうオバマ政権は確立するのか、厳しい撤退政策になりそうである。
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