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2013-02-20 06:58
川柳を読めば本筋見えてくる
杉浦 正章
政治評論家
例によって、最近の朝日川柳とよみうり時事川柳で、今の政治と外交を見てみたい。
【支持率】政権発足早々には朝日に<支持率のカウントダウンが始まった>と揶揄(やゆ)された安倍内閣支持率だが、奇妙なことに2回目や3回目の調査は軒並み上昇している。最初の“ご祝儀相場”が徐々に減少してゆく歴代政権と比べても異例だ。読売が71%と大台に乗れば、朝日は59%から3ポイント上昇の62% 。時事は7.4ポイント増の61.4%といった具合だ。朝日川柳は“読み”を完全に間違えた。川柳だからいいものの、政治部長だったらクビだ。各紙の分析は、経済政策「アベノミクス」が評価されたというものが多い。確かに株価は上がるし、円相場は下がるし、前政権の“暗くて陰鬱”な 3年3ヶ月を吹き飛ばすような勢いだ。やはりもちはもち屋で、老舗の政党は勘所を押さえている。しかし、各紙の分析は、肝心のポイントを外している。支持率上昇は、中国の尖閣強硬姿勢と北朝鮮のミサイル・核実験が大きく寄与している。首相・安倍晋三の毅然とした右寄り姿勢が評価されているのだ。安倍も<支持率に安倍のみクスリ笑う春>(朝)と駄じゃれを飛ばされて、まんざらでもあるまい。しかしアベノミクスの本質はまだまだバブルの色彩が濃厚。きっかけがあれば相場を押し上げている外人投資家らが、さっさと引き揚げる可能性も除去できない。支持率を7月の参院選まで持たせられるかどうかが、安倍にとっての最大の関心事だ。そこで読売川柳子からは<参院選今やれぬのが惜しい率>と見事にその心を読まれた。
【アベノミクス】アベノミクスのとばっちりを受けたのが日銀総裁・白川方明。泣く泣く4月の任期切れを待たずに辞任を表明したが、低迷するデフレに打つ手なしで、手をこまねいていたのだから、同情する者はいない。安倍は<日銀と相合い傘で行く闇路>(朝)で、誰もやったことのない未知の領域に突入する。とにかく<大本営発表に似るアベノミクス>(朝)と言われようが、いまは行け行けどんどんしかない。日銀は、言うことを聞かなければ、「日銀法を改正するぞ」と脅かされているわけだから、後任総裁も「長い物には巻かれろ」と腹をくくるしかない。来週中に人事が決まるが、まさに<ままならぬものを引き継ぐ後白川>(朝)となるわけだ。それにしても13兆円の補正予算を成立させるのは良いが、年度内に使い場所があるのだろうか。手っ取り早く公共事業をどんどん進めて<美しい日本よく見りゃコンクリ製>(朝)ということか。中央高速のトンネル事故もフルに活用して、全国規模で老朽化した公共事業の補修に取りかかる。だから年寄りからは<どうしてくれる我々の老朽化>(朝)というぼやきも出てくる。
【麻生】ネットでウケのいい財務相・麻生太郎だが、G20に行く際の出で立ちにやんやの喝采だ。1977年にベストドレッサー賞を受賞しただけあって黒のソフトに黒のコート。マフラーは水色というスタイルは粋。並み居る首脳の中でも際だった。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルからは「ギャング・スタイル」とからかわれたが、日本の川柳も負けてはいない。<SPが囲む組長見りゃ大臣>(朝)だそうだ。
【照射】「隣りに嫌な人が住んでいても引っ越すわけにはいかない」とぼやいたのは、首相・大平正芳。その頃はソ連を指したが、今は中国。なにしろ街を歩いていると、肩からぶつかってくるような連中が人民解放軍だ。レーダー照射などという危ないことを繰り返す。すれ違いに刀のさやが当たることを“さや当て”というが、昔の武士なら段平を抜いて大げんかだ。ところが自衛隊は我慢の子。さすがに在日米軍司令官のサム・アンジェレラは、百戦錬磨とみえて的確なコメントをしている。自衛隊側の動きを「プロの対応だ。レーダー照射の仕返しなどしておらず、挑発的ではない」などと評価した。<中国軍レーダーというガン飛ばす>(読)、<縄張りを狙うヤクザがガン飛ばす(朝)>。何もかも発端は石原慎太郎の「東京都による尖閣購入」発言にあるが、本人は反省どころか<元凶の暴走老人知らぬ顔>だ。
【核実験】やはり隣りの隣りに住んでいる刈り上げ頭の兄ちゃんにも困ったものだ。海外留学の経験もあるから前2代の「偉大なる将軍様」よりはましかと思ったが、これがとんでもない食わせ者。中国の国際情報紙「環球時報」までから「もし核を持つことが真の安全だとするなら、それは幼稚な考えだ」とこき下ろされた。確かに「幼稚」の一言に尽きる。日本の新聞も負けてはいない。読売が<迷惑は隣のガキの花火好き>と噛みついた。ヒットラーにせよ、チャウシェスクにせよ、カダフィーにせよ、独裁者の末路は知れている。どんどん建造しているご先祖様の金ぴかの銅像の列に入れるかどうかもあやしい。ろくろく食べるものもなく、あえいでいる民衆の力を馬鹿にしてはいけない。いつまでも<爪に火を灯して地下で核をこね>(読)などとやっていられるわけがない。世界中から<ミサイルと核でくわえる高楊枝>(読)と足元を見すかれているのだ。銅像はいつかはひっくり返る。今朝の朝日川柳が<大器かと待てど暮らせど小器なり>と自分の愚息を詠んでいるが、ピタリ当てはまる。
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