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2013-01-23 06:59
懲りない男・麻生の失言癖は直らなかった
杉浦 正章
政治評論家
危ない危ないと思っていたが、ついにやった。またしても懲りない男・麻生太郎の失言だ。要するに、財務相としては高額な終末期医療費は税金で負担したくないと言いたかったのであろう。そうならそうと、理路整然と主張すればよいのだが、発言には一貫して自分の人生哲学を他人に押しつけようとする“おぼっちゃま”型の短絡志向がみられる。後期高齢者問題では、3年前の総選挙で廃止を唱えた民主党に圧勝をもたらしたが、今度も「家族の心情」無視の終末期医療をテーマに、参院選に臨んでみてはどうか。問題発言は、麻生が社会保障制度改革国民会議で、終末期の医療について「私は遺書に『さっさと死ぬから、その必要はない』と書いてあるが、そういうことをしておかないと死ぬことができない。『いい加減、死にたいな』と思っても、とにかく『生きられるから』といって、生かされちゃかなわない」と述べた部分だ。「さっさと死ねるように」と報道され、結局麻生の訂正につながったが、マスコミはその前段にある発言を見逃している。麻生は「現実問題として、今経費をどこで節減していくかと言えば、もう答えなんぞ多くの人が知っているわけで。高額医療というものをかけて、その後、残存生命期間が何カ月だと、それに掛ける金が月一千何百万円だっていうような現実を、厚生労働省が一番よく知っているはずだ」と述べている。
これは、どう見ても「高額医療は税金で負担すべきではない」と主張している。ましてや税と社会保障の一体化を協議する会議の場での発言であり、社会保障費を削減せよという財務省の思惑を端的に反映したものに他ならない。筆者は、財務相に就任して以来の麻生が出演するテレビ番組を見て観察してきた。この政治家が3年間のブランクでどのような変ぼうを遂げたか、を見届けたかったかったからだ。ところが、懲りない男丸出しであった。それどころか、マスコミに対して斜に構える傾向が加わっていた。必ず一言か二言、マスコミを批判をする。例えば、NHKでは首相・安倍晋三の健康に関連して「『高揚している。高揚している』と、NHKはよくたたいていましたが、どうでしょうかね。選挙中に高揚しないと、『やっぱり体が弱い』と言うのではないか。選挙なんてのは、高揚しているのは当たり前だ」と司会者に噛みついた。NHKが「高揚していると叩いた」ニュースは見たことがないし、高揚しているとの表現があったとすれば、むしろ褒めているのではないかと思える。麻生政権の時の“袋叩き”への遺恨から、被害妄想に陥っているのではないかとさえ思えた。
山のようにある麻生の失言集を分析すれば、実に“無邪気なお坊ちゃま”ぶりが分かるが、その傾向が度を超して“人格蔑視”につながるケースが多いのだ。対人関係に関する失言が圧倒的に多い。「七万八千円と一万六千円はどっちが高いか。アルツハイマーの人でも分かる」「東京で美濃部革新都政が誕生したのは、婦人が美濃部スマイルに投票したのであって、婦人に参政権を与えたのが、最大の失敗だった」「新宿のホームレスを収容所に入れたら、『ここは飯がまずい』と言って出て行く。ホームレスも糖尿病という時代ですから」などなど。高齢者や婦人、弱者を明らかに蔑視している。「野中のような部落出身者を日本の総理にはできないわなあ」と優秀なる政治家・野中広務を差別。しまいには、日米豪閣僚級安全保障対話が延期されたことに関連し「シャロン首相の容態が極めて悪く、会議途中でそのままお葬式になると意味がないので、延期ということになった」と宣うた。よく外交問題に発展しなかったものだ。
その心理を分析すれば、根底には高所から見下す姿勢が濃厚であり、これは育ちによるものだろうか。深層心理的には自分の容貌へのコンプレックスの裏返しがあるかもしれない。もちろんマスコミの言葉狩りは厳に戒めなければならない。しかし、発言から政治家の人格や能力を分析するのもマスコミに課せられた重要な使命である。麻生も、バーや料亭の座談では大笑いになるからといって、同じ発言を一般大衆や政府の会議で繰り返して、うけを狙うのは、筋が違うことと心得るべきだ。尊厳死を選ぶのは自分の勝手だが、既にある高齢者医療制度を、金がかかるからやめよというのは、無駄な公共事業を散々作ってきた自民党政権首脳の言うことでもあるまい。いたずらに社会不安を生じさせるだけである。1月23日の朝日川柳に<個人的だったら、家でそっと言え>とあるとおりだ。それにつけても、新政権とマスコミのハネムーン期間が従来のように3か月続くかどうかは定かでないが、どうも麻生あたりの失言が、国会審議も含めて“アリの一穴”となりそうな気がしてならない。川柳でも<訂正の後は、誤読という不安>と見事に切り込まれている。
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