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2012-09-19 07:01
「原発ゼロ」で尖閣が中国領になる理由
杉浦 正章
政治評論家
どこまでこの民主党政権は愚かでピントが狂っているのだろうか。今度は「30年代に原発ゼロ」を国際公約にしてしまった。国際原子力機関(IAEA)総会に外務副大臣・山根隆治を派遣して、「ゼロ方針」を表明させたのだ。それも「原発に依存しない社会への道筋は必ずしも一本道ではない」などと矛盾する態度を表明したのだ。さすがにIAEA事務局長・天野之弥が「東京電力福島第一原発事故から18か月を経て、原子力が多くの国の間で引き続き重要なエネルギーの選択肢であるのは明らか」「各国が自国への影響を考えている」と異例の懸念を表明したほどだ。このままでは野田は、今月下旬の国連総会でも得々と「原発ゼロ」を強調するだろう。ほくそ笑むのは、経済、外交両面で日本“蹴落とし”を狙っている中国と韓国だけだ。中国代表は総会で、日本とは真逆の原発増設推進の方針を表明した。総会の空気は原発推進を確認した形だ。問題の核心は、首相・野田佳彦に「レームダック政権は国家の重要政策を決定してはならない」ことが分かっていない点だ。政権交代すれば、自民党は直ちに方針転換することだろう。国際公約化は日本自身の信頼喪失に直結するのだ。
歴史のイロハを知らなければならない。歴史上どの国も、国の大小を問わず、その国家興亡の歴史をたどれば、滅亡は、その国の指導者や国民が軍事安保も経済安保も「天から降ってくる」と平和ぼけした時点から始まる。平和ぼけによって、隙あらばと虎視眈々と狙う外国新興勢力から領土を蚕食され、その土台を食い荒らされて、朽ち木のように倒れるのだ。欧州の帝国主義勢力に蚕食され、日本にとどめを刺された清朝が倒れたのは、117年前だ。李朝が日本に併合されたのは、100年前だ。いずれも国家、国民の疲弊が原因であることは、歴史が証明している。日本が北方領土を国家疲弊の極致の中でソ連に取られたのは67年前だ。国家百年の計で展望すれば、「原発ゼロ」で日本の国力が減退すれば、尖閣諸島などはもちろん中国の手に落ちる。国土などは、隣国に蹂躙(じゅうりん)されるがままとなる。国家・国民は疲弊の極致に陥り、失業者が街に溢れ、無気力、無抵抗のまま、日本は老衰状態に陥る。原発推進で興隆する中国、韓国が先進国となり、日本は指をくわえる気力も失せて、戦争直後にマッカーサーが指摘したとおりの「四等国」に転落する。中国、韓国の援助にすがり、その目の色をうかがって、こそこそと生きる小動物のような国になるのだ。国家というのは、興亡の歴史だ。原発ゼロは「亡国」の始まりなのだ。
日本のよすがとしている超精密産業が、電力の安定供給なしに維持できるのか。現在ですら化石燃料の輸入などで年間3兆円もの国富が流出している。30年代に原発をゼロにするための投資は、120兆円が必要である。コスト、技術の両面で代替実現の可能性が薄い自然エネルギーの導入など、まだ海の物とも、山の物とも付かないのである。あやふやなものに国家の命運をかけることは責任ある政権の決してやってはいけないタブーなのだ。国民生活への影響も甚大となる。国民生活を守るべき政府が「原発ゼロ」を奇貨として「欲しがりません勝つまでは」と、“窮乏政策”を強いるからだ。電気料金が2倍となれば、消費増税に匹敵する増税に国民はあえぐことになるのだ。かすかす切り詰めて2万円払っている所帯が4万円を支払うことを受容できるのか。消費税増税に加えての実質増税である。中小企業も生存権を脅かされる。廃業、倒産が続出して、生き残りをかけて企業の日本脱出が展開される。国内総生産は15兆円も減少する。失業者は300万人以上に達して、街に溢れる。企業はストライキの続出で社会不安はその頂点に達する。ところが、首相・野田佳彦は「そうなってもいい」と発言しているのだ。なぜなら新エネルギー政策について「将来的な原発の稼働ゼロは国民の覚悟だ」と強調しているのだ。電気料金が倍増しようが、亭主が失業しようが、戦前戦後の1時期のように、裸電球の下のちゃぶ台に親子仲良く爪に灯を点すような生活をする覚悟がある、と判断しているのだ。いくら強靱な精神力と気力を持った国民でも、政府のこの“棄民政策”には敗れる。やる気をなくす。そうして亡国の道をたどることになる。
そうなって初めて尖閣諸島は中国の手に落ちるのだ。竹島を日本が奪還することが不可能なように、国家は健康体であれば、領土を奪われることはないのだ。財界も激怒の頂点にあり、内外のあまりの反発の強さに首相・野田佳彦はその「革新的エネルギー・環境戦略」の閣議決定を避ける方針だという。となれば、政府は「ゼロだ、ゼロだ」と叫ぶだけのオオカミ少年ということになる。方針は、もともと法的なバックアップがなく、ゆるやかなものであったが、ますます“いいかげん”なものとなった。この大ぶれの象徴するものは、野田政権には「国家からエネルギーの根幹を除去したらどうなるか」と言う視点などゼロだったということである。そこには、ただひたすら目先の選挙しか考えない大衆迎合路線だけがある。幸いにも自民党総裁候補・石破茂が米国の上院議員ジェイムズ・ポール・クラークの発言を引用して「政治屋は次の選挙を考え、政治家は次の時代を考える」と「原発ゼロ」を批判している。他の総裁候補も全員が批判している。すべてのマスコミが野田の方針を「選挙対策」と看破している。小手先細工では民主党凋落の構図は変わらないと断言しておく。有権者は亡国の政策を推進する戦後最悪の政権にきっぱりと見極めをつけ、軽薄なる大阪のポピュリズムにも惑わされず、自民党中心の政権を選択するべきだ。それしか地獄への道を回避する方策は無いと肝に銘ずるべきだ。
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