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2012-08-31 06:43
維新になびく“ネズミ派”と“かこつ派”
杉浦 正章
政治評論家
「国会議員の維新合流が加速」と政界に緊張が走っているが、果たしてどれほどのものだろうか。維新新党参加がささやかれる議員らを分析すると、一番“いい玉”が元首相・安倍晋三で目立つが、本人は慌てて否定している。何のことはない、維新に接近しているのは、ほとんど名も知れぬ「沈没船逃走ネズミ派」とやや知名度のある「身の不運をかこつ派」に分けられる。維新はとりあえず「ネズミ派」を集めて、政党要因を満たし、総選挙に臨む。その戦略は、国会議員の切り崩しである。「維新を吸収しよう」と企んでいたみんなの党は、吸収どころか、逆に分裂必至の状態に追い込まれた。おそらく“踏み絵”をするのであろう。維新は9月9日に新党参加を希望する国会議員らとの公開討論会に向けて動きを活発化させている。この過程ではっきりしたのは、維新は、既成政党との合流を避け、独自新党路線で総選挙に対処することだ。この結果、哀れをとどめるのが、渡辺喜美率いるみんなの党だ。渡辺は、1年も前から「みんなの党のアジェンダと維新の政策は完全に一致している」といじらしいばかりに維新にすり寄り、総選挙への基本戦略を「維新吸収によるイメージアップ」ととらえていた。問題は、唱えるだけで、根回しが全く出来ていなかったことだ。
ようやく8月20日夜に渡辺は、橋下と秘密裏に会談したが、その結果は散々であった。渡辺の吸収の企みを橋下が完全に蹴ったのだ。渡辺は、これまで「維新、維新」で党内を引っ張ってきたが、この“振られ”方はひどすぎた。まず名前も聞いたことがない参院議員が3人離党して、新党に参加する動きを始め、党分裂に直面した。渡辺の脇の甘さが見事に露呈する結果となった。こうして「かこつ派」の渡辺は、「ネズミ派」の議員の逃亡を招いてしまったのだ。「かこつ派の長」が安倍だ。一部に「離党して、新党参加」と報じられたが、火のないところに煙は立たずであったのだろう。しかし、いくら何でも総理総裁まで勤めた人間である。おまけに保守本流を自任している。その安倍が新党に参加はない。「よほど切羽詰まっているのだろう」というのが、自民党内の大方の見方だ。政権を投げ出したイメージが強すぎて、首相返り咲きには冷たい空気が漂っているのだ。本人は「我々が発言しても、報道されないが、橋下君が発言すると報じられる。彼らには力がある」とベタ褒めだ。橋下の本質が口から出任せのテレポリティクスにあることを理解していない。選挙後の提携に動くことは間違いない。
「かこつ派」の元幹事長・中川秀直は、ただ一人消費税法案の採決を欠席して、役職停止6カ月の刑を食らって、自民党内では総スカン。そこを狙って維新は、甘い言葉で働きかけている。かつて「衆院選に立候補する代わりに、総裁にせよ」と、タレントの本性丸出しの大風呂敷を広げ、その後鳴かず飛ばずの元宮崎県知事・東国原英夫にも誘いの手を広げている。ただいま醜い喧嘩の真っ最中で、落ち目の愛知知事・大村秀章と名古屋市長・河村たかしにも接近している。一方で、維新は「ネズミ派」への働きかけも懸命だ。とりあえず国会議員5人の新党要件を満たして、選挙を有利に展開する必要があるのだ。新党と認められれば、次期衆院選で小選挙区と比例区の重複立候補が可能となる。恐らく父親頼三が草葉の陰で軽佻(けいちょう)浮薄への接近を嘆いている松野頼久や松浪健太ら5人が集まっており、新党への流れは確定している。
こうみてくると、潮流は政党の本流は維新へとはなびかず、もっぱら「ネズミ派」と「かこつ派」ばかりに限られている事が分かる。だらしのないことに、各政党は「維新を怒らせては」と、自民、公明など7会派が共同提案した大都市地域特別区設置法を成立させた。新聞よっては、設置法が「大阪都」を認めていないのに、「大阪都構想」などとはやし立てているが、これは間違いだ。「大阪特別区構想」への“格下げ”が適切だ。要するに、既成政党本流は、橋下テレポリティクスの風がいつ収まるか、とみているのだ。選挙後の流れは民・自・公路線が生き続けると思われ、その流れが浮上すれば、維新は単なるちいちい、ぱっぱばかりの野党にすぎなくなる。ここで言いたいのは、民放テレビの無責任な「風」作りはもういいかげんにせよ、ということだ。橋下が荒唐無稽な議員定数半減を主張すれば、コメンテーターは「天才」とたたえ、コスプレ不倫などはそっちのけだ。3年前に民主党に「風」を吹かせて、政治の大混乱を招き、国の安全保障にまで影響が生じている現状にどう責任をとるのか。民放は面白ければよいのか。この民放テレビ主導の政治が、これまた「衆愚の浮動票」に作用して、半年たてば確定的にその愚かさが分かる「維新ベビーズ」を生むのだ。小沢チルドレンに取って代わるだけなのだ。今度の投票行為ほど、国民のガバナビリティが問われるものは無い。
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