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2012-08-08 06:53
野田は党首会談で解散に「踏み込む」しかない
杉浦 正章
政治評論家
事態打開のための民・自・公の党首会談ができるかできないかは、8月8日未明にかけての水面下の調整に絞られている。首相・野田佳彦周辺と自民党総裁・谷垣禎一周辺の非公式接触で何が生まれるかだ。自民党側は文書による今国会解散確約を主張、官邸側はこれに難色を示している模様だ。「解散」をどう表現するかはすべては裏舞台での駆け引きの行方にかかっている。まとまれば、党首会談開催へと動く。自民党の主張する回答期限は8日だ。野田はまず国対委員長会談などで打診することになりそうだが、妥協が成立しなければ、与野党激突のチキンゲームが続く流れだ。民主党政権側は例によって幹事長・輿石東の「抵抗」が顕著になってきている。輿石は「あくまで解散の約束などすべきでない」という立場を貫こうとしている。衆院通過の際は野田が消費増税法案の継続審議を狙う輿石を押さえ込んだが、今回は容易ではない。衆院における内閣不信任決議案を否決しなければならないからだ。野田にしてみれば、輿石に開き直られては「粛々と否決」などとてもできない。その輿石は、野田が解散の約束をしかねないとして、党首会談にも反対している。
要するに、衆院通過は野田ペース、参院は輿石ペースで事が運んでいるのだ。もちろん輿石は、たとえ消費増税法案をほごにしても解散を先延ばしすることを画策している。このため谷垣サイドはいきおい“輿石飛ばし”で官邸側と接触せざるを得なくなっている。こうした接触を通じて谷垣には首相サイドから「この事態を打開すべく、今、鋭意検討しているのでしばらく待ってくれ」という話が伝わってきているのだ。自民党筋によると、谷垣は文書による解散確約を求めている。しかし、過去に首相が伝家の宝刀である解散を文書で約束させられた例はない。野田にしてみれば、下手に約束すれば、7日に決まった来月21日の代表選挙での再選がおぼつかなくなる可能性がある。
こうした中で元首相・森喜朗が7日打開策を提案した。同日夜の民放番組で「首相は絶対、解散の確約をしてはいけない。(谷垣は)言えないことを言えと言っている。頭がおかしくなっていると思いたくなるぐらいだ」とまず谷垣を批判して、野田の肩を持った。しかし、続いて森は「首相が衆院解散を言わなくても、お互いにわかる発言の仕方はある」と述べたのだ。これが意味するものは、党首会談で秋の臨時国会冒頭の解散でも“示唆”するしか方法はないという考え方だ。臨時国会解散は、野田も谷垣も党首選挙を経た上での解散となるため、受け入れやすい側面がある。元官房長官・町村信孝も「10月に臨時国会を召集して解散し、11月に投開票というのが永田町の多数説だ」と述べるに到っている。事実、官邸筋によると、野田周辺では臨時国会解散示唆も妥協案の一つに上っているようである。谷垣が激怒した野田による来年度予算案の編成をあいまいな表現にする案などがささやかれている。しかし「今国会解散」にこだわる谷垣がこれに納得するかどうかはまだやぶの中だ。いずれにしても党首会談が開かれて事態打開へと動くには、野田のゼロ回答では物事は進まない。
というのも、焦点は、否決が確定的とみられる衆院での不信任案ではなく、参院での問責決議案に移行しているからだ。不信任案については、さすがの民主党内の消費増税反対論者も解散に直結しては元も子もなくなるという判断に立ち至ったようだ。したがって、言われているように小林興起ら離党覚悟の造反議員が出ても、可決に必要な15人には達しないものとみられる。問責決議案は、中小野党の決議案と自民党の決議案を一本化する動きが生じており、可決される方向だろう。首相退陣に直結させる法的拘束力はないが、国会審議はすべてストップする。そうすれば消費増税法案の参院での可決は不可能になる。憲法に基づき衆院での再可決という手があるが、これも野田が解散を確約しない限り、自民党は応じまい。自民党が応じなければ、必要な3分の2の多数は確保出来ないのだ。したがって、あらゆる事態打開策が野田の解散決断にかかってきているのだ。野田は輿石に乗せた体重を、野党側へとずらす必要に迫まられている。消費増税法案に政治生命をかける野田は。“輿石離れ”しか生きる道が残されていない。輿石も、総選挙で負けるのはもはや早いか、遅いかの段階に入ったことを知るべきだ。
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