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2012-06-05 20:21
橋下一派が台頭したのは歴史的必然
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
この3ヶ月の間を振り返ってみると、政治は例によって全く頼りとするに足りない。かつてはこの国の将来についてしかるべき青写真を描いた(有能な)官僚諸氏も、志をどこに置いてきてしまったのか予算のおこぼれを余生に役立てることに熱心な有様のように見受けられる。これを鋭く論評する筈のマスコミは所謂「記者クラブ」体制にがっちり組み込まれた上に、その周りに蝟集する学者評論家の類いが、全て御用学者として再編され、耳ざわりの良いことをいう学者だけがナントカ審議会や委員会の委員として少なからぬ報酬と「名誉ある地位」に安住する。気骨在る在野の学者諸氏は、怒り心頭なのだろうか、ともすれば奇矯の説に走ったり、「世をすねた」かのごとき言説に安住し、それはそれで糧の途が立つしかけになっている。とはいえ反体制の議論そのものが「組み込まれ」てしまっていては、おっちょこちょいのTVコメンテーターを除いては、どこか醒めた趣がないではない。
どうして、何時からこんなことになってしまったのか。というよりも、わが国に言論を以て国論を、政治を左右すると言う気概の様なものがいつからなくなってしまったのだろう、と訝しく思われた。正確に言うとなくなった訳ではない。職業政治家の間になくなり、それが反射的にそのお取り巻きに及んでいる、というのが正解かもしれない。典型例が橋下さんと維新の会の面々に対する国会議員の対応で、橋下さん達の政治メッセージもその発信態様も極めて明快だ。ところがこれとどう付き合って良いか、既成政党乃至は政治家の方が戸惑っている有様はほとんど滑稽でさえある。旧い立て看板を掲げてその下で選挙だけしている、という知的に怠惰な生活に慣れ過ぎて、政治的意見の共通項を探し、その限りにおいて立場の異なった人々と共に実効性のある政策に結びつける、という政治のイロハの様な作業が全く出来なくなってしまっている。
唯一当初から好意的な対応をしているみんなの党にしてからが、具体的に何をどうするかについては全く何をして良いのかお解りになっていない有様だし、当初から敵対勢力と位置づける愚策をとった民主党は言うに及ばず、その他の政党も、たかだかあわよくば関西地区の選挙協力のパートナー、と言う程度の認識と作戦しかお持ちになっていないようだ。橋下さん一派の政治的主張について異論反論があるのはむしろ当然だと思うが、民心を掌握するあの政治的起爆力の様なものとどう結合して良いか解らず、右往左往している有様は無惨と言う他はあるまい。
戦後七十余年を経て、わが国はそれなりの民主主義を定着させ、かつ夢かと思われた民主党政権まで誕生させた。その出来映えは最初のうちは惨憺たるものだったが、ここに来てやっと形になりつつある。肝心の自民党の方が弱体きわまりない、およそカリスマ性のかけらもないリーダーシップのもとで低迷を極めているのは少し気がかりではあるが、これもどうやら、ねじれ国会を利したバカの一つ覚えの問責決議から脱却しそうなのはめでたい限りだ。そんな折も折倦んだ人心を読んで橋下一派が台頭したのは歴史的必然というべきだろう。問題はこれを既存の政治「秩序」の中にいかに組み込んでゆくかにある筈だ。先の総選挙で候補者を集め損なったみんなの党がブームを起こし損なった。橋下さんによって提供されたこの機会を逸すると、日本の民主主義再生は当分夢と化するおそれなきにしもあらず。それにしても、議員諸氏はどうして生産性のまるでないshould jave beenや揚げ足取りだけあんなにお好きなのだろう。自民党の野田さんや伊吹さんのような政治家がダース単位で出てきてはくれないものだろうか。
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