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2012-05-07 04:59
政局は、「小沢切り」か「野田降ろし」かの正念場に
杉浦 正章
政治評論家
連休明け政局は、早々から元代表・小沢一郎の党員資格停止解除問題で幕を開ける。自民党は最終的には「小沢切り」を求めており、停止解除問題はその試金石となる。首相・野田佳彦は、まずここで“壊し屋”小沢に対処する力量を問われ、対応次第で終盤国会にかけて消費増税法案、原発再稼働の成否に大きな影響を及ぼすだろう。「切れない野田」の印象は内閣支持率を含めすべてにマイナスに働く。野田、自民党総裁・谷垣禎一、小沢の“政局トライアングル”がいよいよ正念場を迎える。要するに政局舞台のすべては、野田が指導力を発揮してコントロールできるかどうかにかかっているのだ。まず小沢問題だ。小沢裁判の控訴期限は5月10日。検察官役の指定弁護士3人はさる2日に控訴問題を協議した。同弁護士・大室俊三は「高裁で判決を覆すことは容易ではない。慎重に判断する」と控訴に消極論を述べたようだ。あと2人が同調すれば、無罪判決は確定することになり、逆に控訴となれば、一審無罪が党員資格停止解除に相当するかどうかが、党内議論を巻き起こす。無罪確定なら、小沢は党員資格を文句なしで回復し、いよいよ、歌舞伎で言う“大見得”を切るだろう。控訴なら、動きは削がれる。小沢は消費税法案に対する野田の姿勢を「国民に対する裏切りだ」と断定して、事実上の「野田降ろし」を宣言している。今後の戦略は、党員資格を回復し、野田が「政治生命をかける」とする消費増税法案を阻止し、あわよくば党代表復帰を狙うだろう。
既に小沢寄りの姿勢を露骨に示し始めた幹事長・輿石東は8日の民主党常任幹事会で、党員資格回復を決定する意向を表明している。輿石は消費増税法案について、幹事長職を活用して、実に巧妙な形で“葬り去る”動きを舞台裏で展開している。野田が連休前を望んでいた消費増税法案を扱う衆院特別委員会の審議入りを、何と5月16日まで先送りさせた。衆院の選挙制度改革をめぐる各党協議も暗礁に乗り上げさせている。党分裂回避が輿石の大義だが、何のことはない、小沢の意向を受けて消費増税法案を廃案か継続審議に持ち込む動きをしているにすぎない。国家財政存亡の危機という大局など眼中になく、一介の政治屋の本性を見せ始めているのだ。こうした輿石を野放しにしているのが野田であり、今後はその指導力が待ったなしに問われる局面となる。ところが、最近の野田に目立つのは、自分が直接前に出ない“前さばき”ばかりだ。
野田は、党員資格問題を「役員会、常任理事会で議論して決めることに尽きる」と党に丸投げした。党が決めることとなれば、輿石ペースで事が進むことを容認したことに他ならない。原発再稼働についても、ワシントン市内で同行記者団に、「あくまで地元の一定理解があるかどうかだ」と述べるなど、腰が引け始めた。谷垣が「まるで他人事みたいだ」と批判するゆえんだ。どうやら野田は思考など高次機能を司る大脳のキャパシティが、消費増税法案で満杯となっているようだ。パソコンのメモリが足りなくなったのと同じ状態で、フリーズ寸前のようにも見える。ところが、事態は野田が消費増税法案だけをやっていればよい状況を遙かに超えて、激動要因がひしめいている。野田は小沢の党員資格を回復させたら、世論の矛先は自分自身に向かうことに気付いていない。新聞の見出しが「首相、小沢氏の党員資格回復を容認」と踊るのだ。原発再稼働も、野田が逃げれば半数はいる推進論者の支持を失う。結果は虻蜂(あぶはち)取らずとなることが分かっていない。20%台乗せと危険水域に入った内閣支持率は、このままではさらに急落して、内閣崩壊寸前の10%台に落ち込むことも時間の問題となる。
谷垣が「消費増税に『政治生命をかける』と言ってきた首相の本気度が試される局面だ」と述べているのは、まさにポイントを突いている。谷垣ら自民党執行部の狙いは、野田に“意地悪”して気力を萎えさせ、「小沢切り」して自民党に付かざるを得ない状況に追い込むところにある。狙いは「話し合い解散」であり、これに応じるしかないと野田に思い込ませる“高等戦術”だ。野田は、そもそも水と油の小沢一派との関係をどうするか問われるが、小沢の消費増税法案反対に関しては「何人たりとも党員なら方針に従ってもらいたい。賛成が当然だ」と言いきっている。どっちみち「解散・総選挙即小沢切り」につながるのであり、腹をくくって対処するしかあるまい。まずは党員資格回復などには応じず、原発は臆(おく)せずに、かつて自分が述べたとおり、地元説得の先頭に立って、夏前に再稼働させる。消費増税法案は野党と協力して成立を目指す。問責2閣僚を更迭し、場合によっては輿石を切って、内閣を改造してでも国会を延長して、所期の目的を達成する。1票の格差問題も0増5減だけを先行して処理して、違憲状態を解消する。これが連休明け政局に取り組む野田の選択肢の“王道”だ。これを野田がやりきれるかどうかの正念場なのだ。そのリーダーシップを発揮できなければ、敵を作って自らを“誇示”することだけが習性の大阪市長・橋下徹ら疝気(せんき)筋がつけいる隙をますます露呈させることになるだけだ。
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