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2012-03-22 06:59
我慢の野田は、小沢に熨斗つけて返せるか
杉浦 正章
政治評論家
「顔を洗って出直してこい。このすっとこどっこい」と首相・野田佳彦がたんかを切ったら大変なことになるが、これは8年前の国対委員長時代の発言。今は我慢している。消費増税で元代表・小沢一郎が3月21日付け読売新聞のインタビューで「修正でも反対する」と“ちゃぶ台返し”を宣言しても、我慢の子だ。勢いづいたチルドレンは、増税法案事前審査でかさにかかって、言いたい放題だ。野田は、小泉チルドレンに言ったように「小沢チルドレンはチャイルドシートに座ってろ」と言いたいのを我慢しているが、そろそろ限界が来つつあるようだ。待ったなしの財政の健全化と社会保障の安定財源の確保を大義として、野田は閣議決定を強行せざるを得ない段階に月末には至るだろう。さすがに小沢だ。けんかの仕方を知っている。
インタビューで事前審査の論議について「条項を修正するとか、公務員給与や議員定数を削減するとか、テクニカルな問題ではない。国民が納得しない」と言い切った。要するに「修正でも反対」という問答無用の反対論であり、消費税解散で潰されることへの自己保身丸出しの政局論を展開しているのだ。この発言に乗って小沢グループは攻勢を仕掛けているが、その主張にうなずけるものは少なく、増税反対を口実に「次の選挙で落選したくない」という、これも無責任な自己保身の論理を展開しているに過ぎない。「増税できない理由」を次から次に探し出して、議論をするわけだから、とどまるところを知らない。こういうときは、もっと強い言葉で突っぱねないといけないのだが、政調会長・前原誠司は紳士的だし、官房長官・藤村修も頼りない。早くもへなへなとなったのか、藤村は21日の記者会見で、「今国会での消費増税法案の成立に不退転の決意で臨むのか」と問われて、「国会の運びの話で、政府の側から必ずしも言える話ではない」と述べ、腰砕けとも受け取れる弱音を吐いた。
この調子だから、23日に予定していた閣議決定はおぼつかなくなった。事前審査は22日も継続するが、執行部側は、反対派の要求する問題のうち、もともとこだわっていない再増税条項は事実上撤回する流れのようだ。弾力条項への数値挿入については、これに応ずれば消費増税法案の「凍結」に直結するため、死守するしかない。小沢の当面の狙いは法案の閣議決定の阻止だが、野田は昨年のG20で今年度中の法案提出を国際公約にしており、ここで譲歩すればすべてが破局状態となる。虎視眈々(たんたん)と成り行きを注視するハゲタカファンドの「日本売り」が始まりかねない。国内的にも「不退転の決意」を表明しており、野党は内閣不信任案を上程するだろう。従って、野田までが腰砕けになることはあり得ないだろう。
事態は、遅くても来週中には閣議決定を断行せざるを得ない状況となりつつある。恐らく30日の閣議決定ぎりぎりまでの攻防になるだろう。野田は、この際党首討論で「51対49の党内世論でも、手続きを踏んで決めたら、皆で頑張っていく」と公言したとおり、小異を残して大同につく決断をしなければなるまい。おりから自民党総裁・谷垣禎一は「野田首相に言いたいことがある。小沢民主党元代表と妥協したら何も解決しない、断固反対派を切る決断ができるかどうかだ」と述べ、露骨に「小沢切り」を勧めた。野田にしてみれば、好むと好まざるとにかかわらず、小沢が「修正しても反対」の硬直姿勢であれば、「小沢切り」に直面せざるを得ないのだ。しかし、その決断は閣議決定の段階でする情勢にはない。法案決定権は首相にあり、粛々と閣議決定すればよいことだ。「小沢切り」は、会期末になだれ込んで、小沢グループの反対でにっちもさっちもいかなくなった段階で決断すればよいことだ。野田の昔の言葉をまた再現すれば「まあ、なめんなよ。そのうちしっかりと熨斗(のし)つけてお返ししてやる」。今でも内心そう思っているに違いない。
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