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2012-01-13 06:51
「岡田副総理」でも政権浮揚はあるまい
杉浦 正章
政治評論家
「岡田副総理」は、2閣僚への問責決議で追い込まれた首相・野田佳彦が、その印象を払拭するために打った起死回生策だが、果たして実効はあるだろうか。どうも両刃の剣のように見える。筋金入りの消費増税論者だから、野田にとっては中央突破への強い援軍だろうが、党内的には小沢グループを敵に回した。それに幹事長時代の岡田の実績はたいしたことはない。野田の最近の政治姿勢は、「消費増税一辺倒」に徹している。野田は「消費税のためには障害になるものはすべて取り除かねばならない」と漏らしている。そのために防衛相・一川保夫、国家公安委員長・山岡賢次を“除去”するのだ。加えて、行政刷新相・蓮舫も切る。蓮舫は鳩山内閣以来民主党パフォーマンス政治の象徴であり、最近は鼻についてきた感が濃厚だ。事業仕分けに続く「政策仕分け」なるものも、湿った花火に終わった。おまけに脱税事件で逮捕歴のある男性と食事をしたり、祭りに出かけるという「不適切交際」がばれて、臨時国会で追及された。“除去”しなければ、通常国会でも絶好の攻撃対象となってしまう。
もっとも幹事長・輿石東が「改造には大義が必要だ」と野田に進言したとおり、資質に欠ける閣僚を交代させるだけでは、世間体が悪すぎる。そこで野田は「今後の態勢をしっかり強化するために」改造することにしたのだ。5人程度を交代させる中規模改造で「更迭人事」の印象を薄め、消費税シフトを強調しようとしているわけだ。焦点の前幹事長・岡田克也は、副総理兼行政改革、税と社会保障一体改革担当で入閣する。野田にとっては強力な味方と感ずるのだろう。事実、「不退転の決意」で消費増税に取り組もうとしている野田にとって、自らの主張に固執する「原理主義者」の岡田は、またとない援軍と映るのだろう。野田はあきらかに“中央突破”を目指しており、そのための起動力を期待しているに違いない。
しかし、岡田の起用は、野田にとって当初からの党内融和路線から、大きくかじを切って、小沢との対決も辞さぬ構えに転じたことを意味する。小沢系の2閣僚を切って、幹事長時代に小沢の党員資格を停止させた岡田を起用するのだから、相当な神経逆なで人事だ。案の定小沢サイドからは「もう戦争状態だ」という声が漏れ聞こえる。ただでさえ野党の攻撃にさらされようとしているときに、挙党態勢でなく、分裂も辞さない態勢で、激動の通常国会を乗り切れるか。これが「岡田人事」の第1の問題点だ。小沢グループの田中直紀の防衛相起用くらいでは帳消しに出来まい。田中の防衛相としての能力にも疑問符が付く。さらに岡田を起用して、このまま行けば20%台に突入しかねない内閣の支持率が上がるなど政権浮揚効果が生ずるかだ。筆者は、支持率下落が瞬間的に踊り場状態になっても、なお下がり続けると思う。岡田では人気は沸かない。その証拠には幹事長時代に統一地方選挙をはじめあらゆる重要な選挙で敗北を喫しているではないか。
新鮮味もない。野党対策で自民党副総裁・大島理森とのパイプが期待されるようだが、大島も総裁・谷垣禎一同様に民主党政権による消費税増税反対で凝り固まっている。パイプは通じても、野田が「話し合い解散」へと大転換でもしない限りは、効力を発揮しない。もし話し合い解散をするなら、「岡田・大島ライン」は効力を発揮するかも知れない。いずれにしても、岡田人事はプラス効果よりマイナス効果の方が大きいような気がする。やがてそれが判明するだろう。加えて、国民新党との連立が維持できるかどうかだ。消費増税絶対反対の代表・亀井静香はこの重要な時期に、ハワイで“すねた”ように静養している。改造を前にした与党党首会談には出席しないで、幹事長・下地幹郎が代行する。下地は既に、同党の金融担当相・自見庄三郎の続投を要請、自見の留任が固まったが、亀井は野田が消費増税を強行した場合連立を離脱するつもりなのだろうか。野田は国民新党も“除去”しかねない勢いであることは確かだ。総じて政権は改造の度に味方より敵を作る要素の方が大きいが、どうも野田改造内閣も遠心力の方が目立ち始めるような気がする。
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