ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2012-01-10 06:55
自民党は「政局亡者」の道を選択するな
杉浦 正章
政治評論家
永田町には「政局亡者」が2人居る。自他共に許す亡者が言うまでもなく小沢一郎だが、もう1人は自民党総裁・谷垣禎一だ。すべての事象を政局に結びつけようとしている。谷垣は何が何でも消費税での3月解散に固執しているのだ。しかし、自民党は野田の「2015年10%引き上げ」のいわば元祖だ。その元祖が「賛成だが、反対」では、一般国民にはわけが分からない。野田が事実上問責2閣僚を更迭する以上、与野党協議に応ずるのが責任政党としてのスジだ。「2015年10%」が大局そのものであり、自民党は見誤ってはならない。1月13日の改造で2閣僚を切る方針を固めた首相・野田佳彦は、あきらかに消費税のためには障害物をすべて除去する姿勢を示している。久しぶりに信ずるところに向かって、ひるまず、ぶれずにまい進する首相を見る思いだ。その野田が「政局より大局」として提唱するのが消費税をめぐる与野党協議であり、今週幹事長・輿石東が野党側に申し入れる。これまでのところ自民、公明両党は棒をのんだように協議に応ずる構えを見せていない。その理由は、虚偽のマニフェストで政権を取った民主党が、マニフェストに矛盾する消費増税を訴える資格はないし、「聞く耳持たぬ」というものだ。
しかし、野田は2閣僚を明らかに更迭する方針であり、野党はまず国会審議には応ぜざるを得まい。問題は与野党協議だが、自公両党は消費増税をとっかかりに、解散・総選挙に追い込むのが基本戦略であり、応ずる構えを見せていない。しかし、一般国民は長年続く「政局」にはもううんざりしており、全国紙の論調も消費税の政局化を強く戒めている。2閣僚を交代させても与野党協議に応じない場合は、全国紙は一致して批判の矛先を自民党に向けるだろう。一方で、自民党内も元首相・森喜朗が「野田さんが言うからダメというのでは、自民党は公党として恥ずかしい」と真っ向から執行部の方針に反対を唱えている。前政調会長・石破茂も「自分の選挙とか、自分の党がどうなるか、とか言うことではなく、虚心坦懐に話し合いをしなければならないのだと思う」と与野党協議に前向きだ。執行部の姿勢は国民の共感を呼ばない、とみる空気が強いのだ。たとえ消費税を廃案に追い込み解散・総選挙を“獲得”して、政権の座につくことが出来ても、次に消費税を処理するのは自民党に他ならない。
民主党は反対に回り、またしても消費税をめぐる“10年戦争”が続く。しかし、ヨーロッパの金融危機は待ったなしで日本に襲いかかる。日本の消費増税にめどが立っていれば、極東に世界の金融危機を回避できる礎(いしずえ)が出来ることになる、と言っても過言ではない。歴代政権が延ばしにのばしてきた消費増税は、世界的な視点からも焦眉の急の課題となっているのだ。これが大局そのものなのだ。これを「総選挙で勝てそうだから」と言って政争の具に使おうとしているのが“谷崎流”なのだ。そこには党利党略があって大局がない。輿石は、幹事長として申し入れる以上「些細なことを協議しない」という立場を表明しているが、これももっともだ。そもそも「暖簾(のれん)分け10%」が「元祖10%」と協議すると言っても、大枠は既に決まっているようなもので、細かい協議の必要はない。
それでは協議に入って何を話すかと言えば、法案の取り扱いと連動した解散・総選挙を話し合えば良いのだ。要するに、自公両党は協議を通じて「話し合い解散」に引きづり込めば良いのだ。野田にしてみれば、消費税を廃案にしてしまっては、元も子もないのである。突っ張って無駄なエネルギーを使うより、消費税と引き替えに解散して、一か八かの勝負に出るしかない。このままでは民主党政権は野垂れ死にが目に見えている。消費税を成し遂げれば、有権者の大半は不満を政権側にぶつけるだろうが、マスコミや心ある有権者は野田を応援するだろう。ここで妥協点を考えれば、例えば「話し合い解散」は必ずしも通常国会末にこだわる必要はないのではないか。8月か、9月の臨時国会冒頭解散で決着をつける手もあるのだ。8月か、9月ならば、先の総選挙後3年となり、民主党議員らも元は取った気分になるだろう。公党として、首相として、野党に確約して対処するのだ。自民党にしてみても、しゃにむに政局路線を突っ走れば確実にマスコミの総攻撃を受け、虻蜂取らずになる。ここはいきり立たずに、落ち着いて与野党協議を、知恵を出して“活用”するくらいの寛容さが責任政党として必要なのだ。政局の泥沼化をやっている余裕など、もはやこの国にはない。
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
一覧へ戻る
総論稿数:4661本
東アジア共同体評議会