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2011-12-15 09:59
鈍感首相の「適材適所」
高畑 昭男
ジャーナリスト
外相と防衛相が国家の外交と安全を担う枢要ポストであるのはいうまでもない。その2大要職にど素人を据えて「適材適所」と胸を張った野田佳彦首相の感覚には、当初から強い違和感があった。一川保夫防衛相の相次ぐ暴言、乱行に対して野党が参院問責決議案の提出を決めたのは当然としかいいようがなく、むしろ遅きに失した感すらある。理解できないのは、この期に及んでも首相が更迭を拒む発言を重ねていることだ。
内閣府が3日発表した「外交に関する世論調査」では、「米国に親しみを感じる」と答えた人が過去最高の82%を記録し、「中国に親しみを感じない」は71%にのぼった。前者は東日本大震災の際、日米共同で行われた「トモダチ作戦」で多くの国民が「日米同盟の特別な絆を感じた」(外務省)からで、後者は尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件などで中国の本性がはっきりと透けてみえたからだろう。日露関係でも「良好とは思わない」が増えている。いずれも、日本の安全保障環境がかつてない危機に直面する中でどの国を信頼し、どの国を警戒すべきかを国民が率直に肌で感じていることを示すデータといっていい。
にもかかわらず、外相、防衛相を含めた野田政権の軌跡は、こうした民意を踏まえているとは言いがたい。日米同盟の絆を強化し、中露に対しては厳しい現実的対処で臨むという決意がみえないからだ。とりわけ防衛相の言動は単に沖縄の信頼を無にしただけではない。日本外交の発信力を損ない、国益を日々毀損しているのではないか。「致命的なものはない」から辞める気もない、という言い訳にはあきれる。
米外交が本格的なアジア太平洋シフトに転じたというのに、米軍普天間飛行場移設の遅れは同盟の足を引っ張り、米国の対日信頼を失わせている。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)問題や中露との懸案なども山積している。そうした全体像を見ずに、首相が任命責任の回避や「党内融和」にこだわっているのだとすれば、為政者として国民感覚からますます乖離し、漂流していくのではないだろうか。「適材適所」という当初の言い分は、とてつもないジョークに聞こえる。
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