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2011-12-02 10:08
これでよいのか?党首討論
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
野田総理の始めての党首討論を聴いた。先ず、与野党双方ともに余りの野次の多さに辟易した。本会議によくある聞くに耐えない騒音、というほどではなかったが、深度化する議論を期待して聞き入る、という雰囲気とは無縁であったといって良い。というより、討論そのものが、焦点を絞って論議を深めようというよりは、何とか相手から言質を取ろう、取られまい、という陳腐なやり取りの域を出ない。政治家がディベートに慣れていないのか、意図して当たり障りのないやり取りに終始しようとしているのか不明だが、党首討論もTV上での単なる言葉尻遊び、あるいはPRのチャンスとしか捉えていない言動が垣間見えたのは残念だった。
特に公明党の山口代表は、珍しくメリハリの利いた簡潔な表現をする方だと思っていたのだが、あの限られた時間の中で、沖縄の担当局長の暴言問題を取り上げ、どこまで沖縄県民を侮辱するのか、けしからん、みたいな発言に時間の大半を割いたのには失望した。およそ党首討論の意義を弁えないこと甚だしいというべきだろう。どうしても野党が攻め、与党がそれに応える、というパターンになるのはやむを得ないのだろうが、この場合、攻める側の問題提起がよほど練れていないと建設的な議論になりにくい。その意味ではTPPを巡って谷垣さんが投げたボールに、この問題に対する自民党の「立ち位置」を問い返した野田さんは鮮やかだった。これに対して、与党の情報提供が不十分だ、と応えた谷垣さんはこの時点で議論深化を放棄していたし、消費税を巡って、法案についての協議開始前の閣議決定を求めた根拠も、説得力を欠いたというべきだろう。論理的には、野田さんの議論の圧勝だった、との感が深い。
とはいえ、ことは勝った負けたの話ではなく、政党間の考え方の違いを明らかにし、さらに「ねじれ」の中でそれをどう解決してゆくか、というのが本旨の筈だろう。ディベートの本場の米国でも両党協議会(super committee)が何らの結論にも達しないで問題を投げ出してしまったくらいだから、そんなに簡単なことではないのは解るにもせよ、真面目に聞いていた有権者を肩すかしにあった様な気分にさせるのは感心出来ない。先の大阪市長選で平松氏は、橋下氏の言動批判を議論の中心に据えたところで既に敗北していたと言えるが、ことは自分が、自党が何をしたいかを訴える中味の問題だ、ということに、流石に有権者は気づいている。それを千年一日ではないが失言待ち、言葉尻ゲーム、ネガテイブ・キャンペーンでは、資質を見透かされようと言うものだ。
霞ヶ関の言いなりだし、その意味で論理構成だけはしっかりしているから野田さんは攻めにくい、という弁明が聴こえてきそうだ。それならなぜ、特別会計や独立行政法人、公益法人の淘汰が進まないのかについて質問をしないのか。具体的な尻尾をつかむ機会は失言を引き出すことでしかない、というものでもあるまいに。
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