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2011-11-08 06:57
TPP「反対派3大将」よ、勝負は負けだ
杉浦 正章
政治評論家
「盲(めくら)千人、目明き千人」とは、広辞苑によると、世の中には道理の分かる人も分からない人もそれぞれに多いことを言う。世の中はそれでよい。しかし、国をリードする国会議員がそうであってはならない。環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐる与野党を巻き込んだ議論は、病膏肓に入る状況であるが、総じて大局観のないのが反対派である。将来を見据えているのが推進派だ。農協の鉢巻きを締めると、なぜか馬鹿に見える反対派の「3大将」と、今回は利口に見える賛成派の「5賢人」の主張を分析してみたい。まず「3大将筆頭」が国民新党代表・亀井静香だ。ひたすらことを政局化する発言で首相・野田佳彦を脅迫しており、手法が古い。11月8日の野田との会談を控えて「民主党政権があっという間に倒れることになっていいのか、と申し上げたい」とすごんでいるが、遠吠えの脅しでなく、本当に連立政権を離脱してはどうか。政権の枠内にいることだけでメリットを享受しているミニ政党に、その度胸があるのか。どうもこの政党は、かっての民社党のような“条件闘争”の臭いがして、嫌な気分になる。
「次席大将」が自民党の加藤紘一。この人物は外交官の出身だけあって、スマートさが売り物だったが、農協の鉢巻き姿を見てがっかりした。「TPP交渉は入ったら抜け出せなくなる地獄だ」「全体としても、農林政策の面からも、反対だ、最後の最後まで反対で、超党派で頑張りたい」と、ひたすら感情論を展開している。外交ではそれなりの大局観を持っているのだが、何故だろうか。現在72歳で、おそらくもう一度選挙をやりたいのだろう。それには地元山形県の農協票が欠けては、落選必至だ。「国家より自分が大事」と見える。「加藤の乱」以来の見当違いだ。「顔だけ大将」が前農水相・山田正彦だ。なぜ「顔だけ」かというと、顔が大きいだけでもっているからだ。山田は、野田がTPPに参加するなら「離党する」とすごんでいるが、よく見ると怖くなくて、ジブリのアニメみたいで可愛い。「離党」と言っても、衆参議員の多数を巻き込んだ大きな動きには発展しそうもない。山田は民主党の反対署名が212人にのぼったと発表したはずだが、7日の慎重派の緊急集会には、与野党合計でたったの140人しか参加していない。署名のいいかげんさが分かる。参院に首相問責決議案を出すことをほのめかしているが、そうなれば即政局だ。その覚悟、統率力はないとみる。キーマン小沢一郎は動くまい。
対照的なのが「5賢人」だ。今度だけは賢く見える。まず民主党幹事長・輿石東で、最初からぶれない。「これがあれば日本の農業が再生するというものがあれば、半世紀以上、日本の農政はもう少しなんとかなった。そんなにきちっとしたことができるはずもない」と、農協を切って捨てている。たしかにTPP論議は衰退きわまりない農業と国が抱き合い心中するかどうかの瀬戸際を意味する。「できることはできる。できないものはできない」とはっきり言うのが、政治家に求められる姿勢だ。だいいち国が滅んでは農業も助けられないではないか。これが一番大事な大局観だ。その点自民党前政調会長・石破茂、民主党前幹事長・岡田克也もはっきりしている。石破は「メリットもデメリットもあるが、参加しない選択はあり得ない。気に入らなければ国会で承認しなければいい」と述べる。岡田は「TPPは日本がこれからどう生きていくかという問題だ。アジアの豊かさをわが豊かさにするのが日本の基本戦略」と主張する。いずれもすっきりと胃の腑に納まる論理だ。貿易立国で生き抜くには、参加しない選択はあり得ないのだ。「日本人の精神のありようや気概の持ち方として、そんな内向きでいいのか」と述べる政調会長代行・仙谷由人も最初から全くぶれていないし、発言内容ももっともだ。外相・玄葉光一郎も度胸がある。何と地元の福島県で農協関係者を前にして「何もしなければ日本は縮む」と推進論をぶったのだ。加藤と違って信条のために身を捨てている。
要するに、テコ入れを何度繰り返しても日本の農業は衰退の一途をたどり、耕作放棄面積は拡大し、農業人口の高齢化はとどまるところを知らない。関税自由化が問題になる度に莫大(ばくだい)な税金を湯水のようにつぎ込んだが、その場しのぎでしかなかったことを物語る。実質9割が兼業農家の現実は「TPP反対」と絶対矛盾する。農政は抜本改革に直面しているのであり、そのための財源捻出のためにも、躍進するアジアの力をてこに自由貿易の恩恵を受けて、経済を復活させるしか日本の生きる道はないのだ。国会議員たる者が、己の利害を超越して自明の理を分かるか分からないかの問題なのである。マスコミの論調も定まった。11月1日付社説で読売が「TPP参加へ結論を出す時だ」と書いたが、今度は朝日が8日、ぶち抜きの大社説で「交渉参加で日本を前へ」と論じた。「参加しない限り、新たなルールに日本の主張を反映できない。TPPに主体的に関わることが、日本を前に進める道だ」と断定した。タイミングといい内容といい、近ごろにない社説の傑作だ。勝負は推進派の勝ちなのだ。
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