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2011-10-06 06:57
年内解散なし、野田政権“3月危機”で正念場に
杉浦 正章
政治評論家
「私は崖っぷち」と首相・野田佳彦が強調した意味は、民主党最後の首相になりかねないから「解散はしない」と言うことだ。何としてでも早期解散に追い込みたい野党と、解散回避を基本とする野田の“前哨戦”が続いている。しかし、野田は、前・元首相らと異なり、それなりの安定感もあり、年内解散はおそらく実現しない情勢となってきた。しかし、復興増税と消費増税の増税2連発を予定している野田には、波乱の政局が待ち構えている。来春以降は、確実に解散モードに突入するだろう。自民党の額賀福志郎の質問に対し、野田は「私は3人目の首相になった。崖っぷちであると強く認識している。震災の復旧・復興、原発事故の一日も早い収束の道筋を付けなければならない今、政治的な空白はつくるべきでない」と早期解散を否定した。確かに2年で、「すかたん首相」が2人も代わって、3代目ともなれば、民主党も「唐様で売り家」と書かざるを得ない羽目になりかねない。だから超低姿勢で、解散のカの字もタブーとした政局運営をせざるを得ないのだろう。
現在の野田政権はいわば、復興のための第3次補正予算案を“人質”にして、当面の政局を乗り切ろうとしている図式だろう。野党も同予算案の細部に注文を付けるつもりはあっても、世論を意識すれば、真っ向から反対出来ない内容でもある。だから、10月6日の与野党協議にも応じたのだ。谷垣執行部は補正予算案での対応を局地戦と位置づけ、むしろ早期に処理して、解散へのフリーハンドを確保したい方針なのであろう。従って、民主党の狙うような事前合意には応じないものの、臨時国会では適当なところで切り上げて、成立を認める流れだろう。補正予算は早ければ来月末、遅くても12月初旬には成立しよう。
野田政権は、当面する最大の課題をクリアすることになり、解散へのあつれきを一つ除去できることになるだろう。しかし、難題はその後に待ち構えている。まず、野田が明言している消費増税法案の通常国会への提出だ。野田は、菅内閣が決めた「社会保障・税一体改革案」の中に「11年度中に必要な法制上の措置を講じる」とするスケジュールが入っていることを指摘。「それを踏まえて対応する」と公約している。幹事長・輿石東も10月2日のNHKで「その道筋で党内の議論をする」と同調している。従って消費税論議が本格化する流れとなっている。最大の問題は、復興税ですら大反対の合唱が生ずる民主党内で、消費増税がまとまるかと言うことだ。選挙を前にマニフェストの改訂にもつながる消費増税法案を、小沢一郎がすんなり認めることはまずないだろう。党内の大混乱は目に見えており、無理に突っ走ろうとすれば、来年度予算案すらまとまらない事態に陥りかねないのだ。
例え党内論議を乗り切っても、増税で内閣支持率が上がった内閣はない。国民も、所得増税に次ぐ消費増税のダブルパンチを食らえば、“ドジョウ離れ”して、支持率の急落は必至だ。既に60~70%あった支持率は、日経9ポイント、共同で8・2ポイントの急落である。今後自らの外国人献金問題をはじめ、閣僚の不祥事、小沢の裁判と証人喚問問題などで、支持率はじり貧傾向をたどり、早期に50%を割る流れだろう。野党は、来年の通常国会審議で本格的な政権のイメージダウン作戦を展開するものと予想される。3月頃には30%を切ることも予想される。ただでさえ衆院議員は2年を過ぎれば解散意識の「常在戦場」とならざるを得ない。自民党など野党は、予算関連法案や消費増税法案の欠陥を突こうとするだろう。野党もねじれを活用して、予算関連法案を人質にとって、今度こそ最終決戦段階に入るのだろう。従って、国会審議は3月以降野田政権にとって危機的な状況に陥る可能性がある。これに加えて4月に小沢裁判で有罪の判決が出る可能性があり、野党はかさにかかって攻撃し続けるだろう。「崖っぷち首相」も解散・総選挙の決断を迫られざるを得ない状況となるだろう。
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