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2011-09-13 15:15
歴史は繰り返す:リビアで起こっていること
川上 高司
拓殖大学教授
リビアではようやく反政府闘争が最終局面を迎えた。NATOによる空爆の援護があったにもかかわらず、反政府勢力は素人集団だったため、訓練されたカダフィ軍に打ち勝つことができず、6ヶ月近くも戦闘が長引いた。ここにきて首都トリポリの攻略は見事だった。東西南の都市部を制圧して包囲網を形成、トリポリへの補給線や石油パイプラインを遮断、沖合にはNATOの艦隊が海上封鎖をして、兵糧攻めにした。そうして首都へ突入し制圧した。しかしカダフィ自身は所在がつかめず、彼は「最後の血の1滴まで闘う」と宣言しているため、このまま終わりそうにない。
リビアの民主化はエジプトやチュニジアとは異なる展開を見せた。他のアラブ諸国では国民の力だけで運動を盛り上げたが、リビアは早々にフランスやイギリスなど外国が軍事的に支援をした。この違いは、その国が産油国かどうかに起因する。カダフィ時代からリビアの石油に依存していたイタリアはもちろん、利権を狙うフランスやイギリスは最初から軍事支援に乗り気だった。そして反政府勢力の勝利が見えてくると、軍事支援に反対していたロシアや中国を新政権以後のリビアから排除する動きをさっそく見せている。
この動きは8年前を彷彿させるものがある。アメリカが2003年にイラクに侵攻することに反対したフランスやドイツは戦後のイラクの復興事業から閉め出され、アメリカの企業が復興ビジネスを独占し、まさに「金脈」だったイラク復興で潤ったのはハリバートンなどアメリカの大手コントラクターだった。さらに、大量破壊兵器についても、イラクの思い出がよみがえる。当時ブッシュ政権はフセインが大量破壊兵器を所有していると言い張った。今イギリスが最も心配しているのは、化学兵器をいまだカダフィが所有しているのはないかということである。国防総省の高官は「化学兵器は、安全に管理されているため、危険はない」とコメントしたが、それはカダフィが化学兵器を隠し持っているということを前提としている。これもあくまで現時点では推測でしかない。
今回アメリカはリビア問題から距離を置き、冷静に状況を見極めつつ行動しているようで、当時のヨーロッパ諸国の取った立場に近い。逆に熱くなっているのはフランスやイタリアなどで、8年前のアメリカそのものである。まさに「歴史は繰り返す」の見本であろう。
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