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2011-09-05 07:24
ささやかれる野田政権の“アリの一穴”
杉浦 正章
政治評論家
世論調査の高支持率とは異なり、永田町では、物珍しさが一過性のつむじ風のように通り過ぎ、虫眼鏡で政権を検査し始める段階に入った。すると、首相・野田佳彦はもちろんのこと、新閣僚にも、次々と欠陥が見えてくる。今のところアリの一穴で本当に堤防が崩れるかどうかは未知数だが、閣僚の「欠陥4大将」を挙げるなら財務相・安住淳、国家公安委員長・山岡賢次、法相・平岡秀夫、防衛相・一川保夫だろう。初入閣での危うさには目をつむるとしても、方向感覚、発言の軽さ、政治倫理観欠如など、民主党政治家の持つ特色を余すところなく身につけている。首相・野田佳彦も自らの外国人献金疑惑が出てきたのは痛い。弁舌の巧みさは最初のうちは聞き心地がよいが、かえってあだとなるケースも少なくない。自民党政調会長・石破茂が「おやじ用語を本質をそらすために使ってはならない」と野田の急所をついた。野田が“どじょう宣言”に際して「ルックスが悪いので、首相になっても直ぐには人気が出ないだろうから、解散はしません」と発言したことを取り上げた。野田が政権交代直前に出版した「民主の敵:政権交代に大義あり」の中に「首相が代わったときには、必ず解散・総選挙を断行して民意を問うべきだ」と主張していることとの矛盾をとらえたのだ。
野田には一点にスポットライトが当たり始めて、今後過去の発言や行動との食い違いが野党の攻撃の焦点となる。中韓両国に波紋を投じている「A級戦犯は戦争犯罪人ではない」とする見解や集団的自衛権行使是認発言などは、追及の好餌になる。おりから在日外国人から30万円の献金を受けていた問題が発覚、前原誠司の外相辞任に直結した難題が浮上した。公訴時効を過ぎているが、前原同様調べれば芋ずる式に出る可能性が否定できない。民団関係者が党のサポーターに参加し、パチンコ献金など「在日」との接触の強い民主党の構造的問題だ。閣僚人事も首をかしげるケースが多い。まず財務相に安住をなぜ持ってきたかだ。財務省は当面3次補正や来年度予算編成の急場であるうえに、超円高対策など国家焦眉の急を要するやっちゃ場だ。とりわけ円高対策は専門性を要する問題であり、まったくの素人では対応できるかどうかが危惧される。民主党内ですら、元財務相・藤井裕久が「通貨改革は世界的な潮流。日本が大きな役割を果たさなければならないときに、果たして大丈夫かな」と危惧する発言をしている。野党は意地が悪いから、かつて「乗数効果」の意味を知らない菅直人に恥をかかせたように、適格性の追求から始めるだろう。
刑事被告人・小沢一郎を、公然と擁護する閣僚が2人も登場してきたことも絶好の追及材料だ。焦点の小沢の党員資格停止処分撤回問題について、山岡が「前執行部と同じことをやるのなら、新しい執行部を作った意味がない」と述べれば、一川も「処分が出たとき、個人的には賛成できなかった」と明言した。心ある政治家は、閣僚になったときには、派閥よりも内閣全体を重視する発言をするものだが、二人ともまるで小沢に洗脳されてしまっている。山岡に至っては、来年の代表選への小沢立候補に前向き発言をして、野田をないがしろにする始末だ。野田は小沢処分に関しては「過去の執行部の結論を踏まえるのが基本だ」と発言しており、首相と閣僚2人で政治倫理、つまり「政治とカネ」の問題で閣内不統一の状況に陥っている。これを野党が突かないわけがない。とりわけ山岡は、かねてからマルチ商法絡みの疑惑がささやかれてきており、警察を司る国家公安委員長としての立場や、兼務の消費者行政との絡みで、野党の攻撃対象のトップに位置づけられるものだろう。
全く知られていない話だが、平岡も問題を抱えている。組閣前、法務省幹部の間で「次の大臣は誰だ」という話が話題になり、幹部の1人が「平岡さんでは」というと、「わ~」といって手を振る幹部ばかりだったという。性格が“法匪”と言われるほど理屈っぽく、横柄で、官僚の間で毛嫌いされている。死刑囚は過去最多の120人に達している上に、法相の舌禍は辞任に追い込まれるケースが多い。一川の「私は安全保障の素人だが、それが本当のシビリアンコントロール(文民統制)だ」という“間抜け”きわまりない発言も、石破が「閣僚解任に値する。任命した野田佳彦首相の見識も問われる」と述べれば、参院自民党政審会長の山本一太も「問責決議第一号」と問題視。いやはや新内閣もただでは済みそうもない。挙党態勢のかけ声とは裏腹に、増税、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)、金融緩和の是非など、重要施策をめぐる根深い対立の構図は変化しておらず、マグマとなって吹き出す機会を狙っている。オバマが野田に求めた普天間問題の早期解決も、担当の外務、総務、防衛が「素人」ではおぼつかない。組閣に当たって普天間が野田の視野にあったのか疑わしい。
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