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2011-08-23 07:26
前原の「虚像」が永田町を徘徊している
杉浦 正章
政治評論家
おぼれる者はイケメンにすがるというわけで、民主党主流派が嫌がる前外相・前原誠司をついに代表選に担ぎ出した。背景には言うまでもなく、散々たる選挙区の情勢がある。確実に落選するとなれば、勝てそうな代表をわらをもつかむ思いで前面に立てて、総選挙に臨むしかない。それを意識してか、前原は、小沢一郎の党員資格停止処分撤回に異論を表明した。だからと言って、小沢がいきり立つかというと、まだ微妙だ。小沢は前原を懐柔するか、激突するかのはざまで揺れている。前原がなぜ固辞し続けたかといえば、それは自信がないからだ。外相時代に外国人献金問題で、粘りもせずにあっさりと辞任したのも、根底に自信喪失がある。偽メール事件で大失策をして、代表を辞任して以来のトラウマが、この政治家にはつきまとう。しかし、民主党にとっては、世論調査で唯一人抜きん出ている前原に希望を託すしかない。読売の調査で「誰が最もふさわしいと思うか」を聞いたところ、前原が21%、共同も28.0%で、いずれもトップだ。しかし、リーダーを問う世論調査ほどいいかげんなものは無い。一般人に首相としての適格性を聞くことは、無意味に近い。人となりや政治家を判断するノウハウを知らないからだ。一見誠実そうで、うそをつかないような容貌で、これほど得をしている政治家はいないのだ。
世論調査などは、少女や婆さんに至るまでが、中身が空っぽのイケメン韓流スターにおぼれている人気の類いと、そっくり同じだ。自分のことは前原自身が一番よく知っている。今月半ばまでは「首相と閣僚では仕事の重さが違う。私には能力も覚悟もない」と言い切っていたのが証拠だ。それが財務相・野田佳彦の「大連立」と「A級戦犯擁護」のずっこけ発言で、「この代表では、自分の議席が危ない」と多くの議員が思った結果、人気度の高い前原に期待をつなごうとしているのだ。全ては、議員個人個人の選挙情勢が危機的状況にあることに端を発している。しかし、「前原で本当に大丈夫か」というと、野党にとって追及材料が豊富すぎて、とても予算委員会が持たないのではないか。前原の政治手法は、華々しく打ち出して、「後は野となれ山となれ」型であり、2代続いた愚昧(ぐまい)首相と本質的には変わらない。国交相の時は八ッ場ダムの工事をマニフェストに書いてあるという理由だけで中止宣言したが、あとはうやむや。外相時代は右傾化思想とイケメンが米国務相・クリントンに受けたのはいいが、尖閣事件で官房長官・仙谷由人とつるんで船長釈放に動いた。クリントンに「近く解決します」といち早く情報を伝えたのがその証拠だ。
「状況がどう展開するか」の掌握力に乏しいのだ。加えて、外国人献金問題、暴力団との関係、北朝鮮との緊密な関係、訪朝の際の同行女性との親密な関係など、国会で取り上げられ、中途半端になっている問題は、あまたある。これに全面的なスポットが当たる。野党も必死になって暴くだろう。首相の座とは、政治家を素っ裸にする場所なのだ。間違いなく、ボロボロになることを知っているから、「能力も覚悟もない」であったのだ。しかし、上っ面をみる国民世論は、「前原政権」なら出だしははやすだろう。内閣支持率も50~70%くらいは獲得するが、上記の理由で急落する。唯一前原がなし得る状況突破策は、内閣支持率が急落する前に解散総選挙に打って出て、民主党の「大惨敗」を「敗北」程度にとどめることだろう。幸い野党も、第3次補正予算案だけは、成立に協力せざるを得まい。その後臨時国会末か、通常国会冒頭に、運を天に任せて「一か八かの解散勝負」に出ることしかない。とても通常国会の半ばまでは支持率は持つまい。
大新聞の中には自民党に勝たせたくない一心で、選挙向きの候補をはやし立てる傾向があるから、その分「前原コール」にバイアスがかかっていることを見逃してはなるまい。あおられて小沢グループの若手議員までが前原に傾斜し始めているのだ。そこで問題は「小沢がどう出るか」だが、前原に対抗して推すべき候補が「号泣万里」「ずっこけ野田」「幽霊鹿野」では、決められないのも無理はない。前原が小沢処分撤回を言わないのは、踏み絵を踏まずにけしからんと言いたいところだろうが、小沢にしてみても、少しでも総選挙で大敗しない候補が必要なことは言うまでもない。おまけに10月には裁判が始まって、自らが国会や世論の袋叩きの目に遭うのが見えている。ここは「親小沢」「反小沢」の激突を出来れば避けたいのではないか。そこに前原との話し合いの余地が残る。候補乱立でどの候補も過半数に達せず、再投票で2,3位連合などの手段もあり、予断は全く出来ないのが実態だ。
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