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2011-08-13 10:48
米大統領候補に保守派リック・ペリー台頭:その背景にあるもの
川上 高司
拓殖大学教授
オバマ大統領が苦戦を強いられている。アメリカ債務上限引き上げを巡るドタバタ劇とそれに続く国債格下げによってオバマ大統領の経済政策への国民の不信は募る一方である。5月1日のオサマ・ビン・ラディン暗殺によって上昇した支持率も、この3ヶ月に7ポイントも急落し、今や支持率44%、不支持率49%と逆転している。債務上限引き上げを巡っては、増税反対で妥協しない共和党にも責任の一端があり、さすがに共和党も支持率を若干下げたものの、オバマ大統領よりはましと見られている。ちなみに最も責任があると見なされている議会への支持率は18.5%、不支持率は75.5%とかなり国民の目は厳しい。
共和党の内部でも立候補者への支持が揺れている。トップを走るのはミット・ロムニーと変わらないが、アメリカの財政赤字が取りざたされるにつれて支持率を徐々に下げ、経済の専門家というキャッチフレーズは全く役に立っていない。そして飛ぶ鳥を落とす勢いだったティー・パーティのミッチェル・バックマンも経済問題が深刻になるにつれ支持を失っている。逆に一人支持を伸ばしているのが、テキサス州知事のリック・ペリーである。登場した当初は数パーセントの支持しかなかったのが、7月に入ってからいきなり支持を伸ばし、今やロムニーを追う2番手につけている。ロムニーの支持率が約19%なのに対して、ペリーは14%まで追い上げている。
ペリーは筋金入りの保守派で、福音派の祈りの集会にまめに参加して、福音派の支持をとりつけるのに成功している。このあたりはやはりテキサス州知事から大統領になったブッシュと似たような路線である。さらに彼は前ブッシュ政権時代の主要人物であったダグラス・フェイスやウイリアム・ルティと会い、当時の国防長官であったドナルド・ラムズフェルドとも交流していて、まさにブッシュの再来かとも思わせる。しかも、メキシコへの米軍の介入を主張してみたり、アメリカは変動する世界情勢、バランス・オブ・パワーに対処していかなくてはならないと主張したり、と外交政策に一貫性はない。
だが、アメリカの威信が政治のみならず経済的にも失墜し、普通の国になりつつある今、国民がますます保守化し、福音派への傾倒がますます強まっていく可能性を、ペリーの台頭が暗示している。移民が増え、白人がマイノリティに近づきつつあり、黒人大統領が2期目を狙い、経済的にも政治的にも下降気味のアメリカは、どこに自信を見いだしたらいいのか。そんな不安のうねりが社会を被っているのかもしれない。
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