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2006-06-19 18:20
「米中世界共同管理」などはあり得ない可能性
吉川潤一
学生
叶芳和氏の「米中による世界共同管理論の台頭」と題する5月15日付け「CEACコラム」論説は、米中両国が経済的・戦略的な相互利益を追求するため「世界共同管理」に進む可能性があり、そうなれば、日本は米中両超大国の谷間で双方から無視される哀れな存在に転落することになるだろう、との警告を発しています。しかし、私は、米中関係は、経済的には一応の接近がみられつつも、政治的・軍事的にはむしろ対立が激化していく可能性が強く、「世界共同管理」などはあり得ない可能性だと考えます。米中両国は、軍事的・戦略的にはお互いのパワーをむしろ削ぎたいと考えているからです。以下にその理由を述べます。
第一に、地政学的に重要地域であり、豊富な天然資源を持つ中央アジアで、すでに米中間の軋轢が生じています。米国がアフガニスタン、カザフスタン、イラクに軍事拠点を構築し、存在感を強めているのに対して、中国は上海協力機構を通じて、中央アジア諸国との「戦略的パートナーシップ」を構築しています。中国が米国の中央アジア、中東地域での影響力拡大に危機感を抱き、反米同盟を組織しようとしていることは間違いありません。
第二に、北朝鮮問題では、米国は、北朝鮮の脅威を排除したいが、中国の介入を誘発する危険性があるので、直接的な軍事介入を避けているだけです。他方、中国は、北朝鮮の現体制を日米に対する外交カードとして保持したいが、北朝鮮の核武装化は日本の核武装化を誘発する恐れがあるので避けたいということです。米中両国間には共通の北朝鮮観もなければ、共通の平和と安定のビジョンもありません。
第三に、米国のアフガニスタンとイラクへの軍事介入では、中国は対立を避けつつも、協力はしませんでした。イラン核問題でも、中国は米国の政策に対して反対を表明しています。中国は明らかに米国の目指す国際秩序作りに抵抗しています。というか、中国の目指す国際秩序は米国の世界一極支配を否定する多極支配秩序であって、そのためにロシアや欧州と手を結んでいるのです。米国との世界二極支配を目指すことは、ロシアや欧州を裏切ることになりますが、それは中国にとってあまりにもリスクのある選択です。しかも、米国は中国一国の手におえる相手ではありません。
第四に、「米中による世界共同管理」を妨げる最大の要因として、米国の掲げる「自由と民主主義」のイデオロギーと中国の掲げる「社会主義」のイデオロギーの、根本的な矛盾を指摘したいと思います。しかも、両国ともに最終的にはイデオロギーの価値を最優先するイデオロギー国家です。それを譲れば、政権は国内で支持基盤を失い、国家は求心力を失って崩壊します。
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