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2011-06-17 09:40
アフガニスタン撤退の規模をめぐる大論争
川上 高司
拓殖大学教授
アフガニスタンからの撤退開始時期が来月に迫り、アメリカでは撤退議論が盛り上がっている。誰もが撤退することには異論がない。問題はその規模である。バイデン副大統領は撤退の旗を振る最右翼であり、一方ゲイツ長官や軍部は急激な撤退はかえって危険であると見ており、穏やかな撤退を考えているふしがある。このようにオバマ大統領の政権内でも意見が分かれていて、大統領自身はいまだ撤退規模についての言及はない。大統領はゲイツ長官の進言を待っており、ゲイツ長官はペトレイアス司令官の提案を待っている。
上院外交委員会のケリー委員長は、相当な規模での撤退を求めている。オサマ・ビン・ラデンの死亡によってアフガニスタンに駐留する意義がなくなり、加えて重くのしかかる戦費削減のためにはさっさと撤退すべきだ、との意見を表明している。一方共和党のタカ派のジョン・マケイン議員は撤退規模は小さく抑えるべきで、3000人程度の撤退でよいとコメントしている。
では、当の国民はどうであろうか。ピュー・リサーチ・センターの世論調査によれば「戦費が財政を著しく悪化させている」と考えている国民は、60%にのぼり、「やや悪化させている」と答えた26%をあわせると、86%の国民は「戦費が財政に重くのしかかっている」と考えていることになる。さらに「財政赤字の削減のためには、戦費の削減が必要だ」と考えている国民は、65%にのぼる。「外国への援助を削減するべきだ」という意見が72%に達していることとあわせると、国民の意識は明らかにアフガニスタンへの軍事的・民事的関与には後ろ向きになりつつある。
国民の関心は「雇用」が第1であることは変わりないが、「財政赤字」への関心は昨年12月の時点では19%だったが、今年5月には24%に高まっている。次の大統領選挙では、経済問題の中でも財政赤字の削減が大きな論点になりそうである。
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