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2011-06-01 07:26
「小沢系53人+鳩山造反」で伯仲の攻防へ:不信任案
杉浦 正章
政治評論家
やっと信頼に足りる数字が出てきた。朝日新聞の調査によると、民主党の小沢一郎に近い議員53人が、野党提出の内閣不信任決議案に賛成する意向を表明したという。この数字をどう見るかだが、いずれにしても僅差の攻防になることを意味する。ひとえに鳩山グループの動向にかかってきたとも言えるが、5月31日夜の首相・菅直人と鳩山由紀夫の会談は決裂し、「53人」へのさらなる上積みは確実視される。過半数を達成するためには、民主党から最低78人の賛成が必要だが、賛成しなくても大量に欠席者が出れば、成立する可能性も否定できない。また成立しなくても、66人以上の造反が出て離党すれば、現在305人の民主党は過半数240を割る危機に直面する。政治的インパクトは大きい。
さすがに大新聞はアイデアが豊富だ。小沢側近の言う「賛成者は90人」だの「100人」だのといった数字を信用せず、独自の調査を行った。調査は首相や執行部に近い96人を除き、衆院議員218人を対象としたという。この結果、小沢系議員を中心に「53人」が「不信任案に賛成」と答えたという。筆者は既に50人と分析、自公両党首脳らの会合でも50人との認識で一致しており、まず朝日の「53人」は、執行部の切り崩し困難な固い数字と見ることが可能だ。これは今後増加しうる可能性を内包しているとみるべきだろう。「53人」にあと25人を加えられるかどうか、または大量欠席者を出せるかどうかをめぐる戦いだ。
今後は中間派や鳩山グループの動向をめぐって、6月2日にも予定される不信任本会議直前までぎりぎりの攻防が展開される。民主党内の動きを見ると、約30人の旧民社党系グループが5月31日、不信任案反対を決定したが、50人を擁する鳩山グループは態度未定。同日夜には菅が鳩山を招き2時間15分にわたって不信任案に同調をしないよう説得したが、鳩山は逆に菅の退陣を求め、会談は決裂した。鳩山側近筋は「もう鳩山さんは、菅さんに対する感情がにっちもさっちもいかないところに来ている」と漏らしている。鳩山は昨年の代表選以来菅への批判を強めており、4月28日には参議院議長・西岡武夫と会談し、「菅首相のもとでは政権運営は厳しい」との認識で一致している。5月6日にも北京で「今の政府は、『国民の命を守りたい』という政権交代当初の考え方をないがしろにしているのではないか。子ども手当などの政権公約の理念も消えていき、政権交代した意義が薄れてきている」と批判姿勢を強めてきた。小沢とも頻繁に会談、“絆”を深めており、まず菅支持に急転直下転ずることはあるまい。しかしグループ内にはせっかく作った党を分裂させることに対する慎重論が根強く、全員一致した行動をとれるかどうかの予断は許さない。
こうしたなかで民主党内は幹事長・岡田克也を中心に同調者へのしめつけが厳しく、一方で菅も国会答弁で“政権執着症候群”とも言うべき発言を繰り返している。5月31日も「いまからやるべき責任を放棄してしまうことはできない。何としても原発の事故を収束して、その義務を果たしてゆく覚悟」と、あくまで政権“死守”の構えを見せている。結局、菅の自発的退陣は不可能となり、不信任案可決か、否決されれば参院での問責決議案で強制退陣に追い込むしか、手段はなくなった。また冒頭述べたように総数で66人以上の造反が出れば、バブルで獲得した305議席が過半数割れして、もろくも潰えることになる。「不信任に賛成しても、離党はしない」という見方があるが、岡田の言うように執行部が「除籍」に動けば、党分裂・政界再編へと一挙に流れができる。政局はもうどうにも止まらない流れだ。6月1日の党首討論を皮切りに、食うか食われるか、双方とも引くに引けない最終的な攻防段階に入る。
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