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2011-03-31 09:35
専制的産油国への原油依存の危険性
岡崎研究所
シンクタンク
2月28日付けの『ファイナンシャル・タイムズ』紙で、Nick Butler 英キングスカレッジ政策研究所所長が、不安定な独裁国家に依存する原油供給の現状に警鐘を鳴らしています。すなわち、「最近のリビア情勢に端を発した原油価格の動きは、投機による石油価格の上昇とサウジの増産による現状復帰といった従来のような一時的現象ではない。その背景には、原油供給が一部の独裁国家への依存をますます強めており、これが国際原油市場を脆弱化させ、世界経済の回復にとって脅威になっているという事情がある。問題解決には(1)原油備蓄の拡大と、(2)原油供給先の多様化が不可欠であり、(3)新エネルギー源、特に次世代の原子力発電の開発も重要だ」と指摘し、「リビア情勢は近く収まるかもしれないが、国際原油市場のリスクは一時的ではなく、より根本的なものであり、こうした現実を直視しなければ、市場の不安定と石油価格の高騰は恒常化し、究極的には世界の経済成長が失われるだろう」と警告しています。
バトラーは、英大手石油会社BPの戦略担当副社長を務めた後、ブラウン政権で首相特別顧問を務めたエネルギー政策問題の専門家であり、その主張は至極真っ当なものです。現在のリビアの状況は、一時的なものではなく、より根本的な問題を秘めていることについて、疑問の余地はありません。また、今後、原油供給の不安定化が中東などの他の独裁国家にも波及する可能性を念頭に、問題解決の手段として、石油備蓄拡大や新エネルギー開発を提唱していることも、極めて理に適っています。
問題は、バトラーが言っていることは、1973年以来何度かあったエネルギー危機の際に唱えられた政策と、基本的に変わっていないことです。要するに、言うのは簡単ですが、実行は極めて難しいということです。それに、1973年時点と現在が大きく異なるのは、インドと中国という2つの巨大消費国が出現したことですが、両国がバトラーの主張を単純に受け入れるとは限らない点も、要注意でしょう。
バトラーの正当な主張は、西側諸国のエネルギーが今後も当分原油に依存し続けること、さらに、それだけでなく、恐らく次のエネルギー危機に対する特効薬もないことを、逆に証明しているようにも思われます。なお、リビアについては、カダフィが退陣したとしても、問題が沈静化するとは思えません。懸念されるのは、カダフィ後のリビア内政の混乱が長期化し、最悪の場合、リビア原油がイスラム過激派などの手に移り、石油が再び政治的武器として使われる可能性が出てきたことです。
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