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2011-02-25 07:34
自民の予算案対案は菅が“丸のみ”すれば、“毒まんじゅう”
杉浦 正章
政治評論家
首相・菅直人は、野党の新年度予算案の対案が「丸呑み」出来るような案だったら、内閣総辞職も、解散も回避できるし、政権は1年は延命できる、という“夢見る少女”のような気持ちに時々駆られているに違いない。だから2月23日の党首討論で「自民党の対案が『すばらしい』と言って丸呑み出来るような案を、是非出してほしい」と谷垣に持ちかけたのだ。ところが得たりやおうとばかりに、翌24日に谷垣が発表した案は、丸呑みすれば菅がサドンデス(即死)となりそうな“毒まんじゅう”であった。駆け引きをみてみよう。
菅の「丸呑み」発言は、唐突のように受け止める向きがいるが、源流がある。1998年の金融国会だ。長銀、日債銀が破綻寸前となる金融危機を前にして、時の首相・小渕恵三が民主党の金融再生法案を丸呑みにして、しのいだのだ。菅は昨年末から、この例を引いて野党に修正を迫るよう国会対策委員長・安住淳に指示していた。要するに金融国会の夢が忘れられないのだ。しかし菅は、基本的に判断を間違っている。金融再生法は日本発の金融恐慌がささやかれ、一刻も早い緊急処置が必要であったところに、民主党案がマッチした結果、小渕がのんだのである。今回のように選挙公約そのものが全面対決の核心となる中で、その公約を反映した法案に野党が賛成できるわけはないのだ。
その証拠に自民党は、民主党政権がのめない政策を“厳選”して提示した。まずかねてから「バラマキ4K」と批判してきた子ども手当、農家の戸別所得補償、高校無償化、高速道路無料化の撤回で、総額2.7兆円を削減。加えて公務員人件費1・5兆円削減などで計5・3兆円を浮かせ、予算規模を92.4兆円から89.3兆円に圧縮した。要するに、民主党マニフェストの目玉商品を全否定したのである。
民主党がのめるような案や、妥協の協議に入れるような案を提示すれば、予算関連法案反対で“政局化”を狙う野党の戦略が崩れるのである。自民党総裁・谷垣禎一が「政府がのめば、これは内閣不信任案成立に限りなく近い」と述べている通りであろう。菅が受け入れれば、政権存立の基盤を放棄したことになり、小沢一郎グループの反発で党分裂が決定的になる。だからのめないのだ。
もっとも、谷垣も大ドジを踏んでいる。党首討論で切った大見えが裏目に出たのだ。谷垣は政府の予算案を「端的に言って2年連続で、税収より国債発行額の多いバラマキであり、財政規律の思想とほど遠い」と切り込んだ。ところが、その舌の根も乾かないうちに出した自民党案の国債発行額が、1.8兆円減額したものの42兆5000億円であり、税収40兆9000億円を上回ってしまったのだ。猿が自分のしりの赤いことに気付かないで、ほかの猿の尻の赤さをあざ笑うことを「猿の尻笑い」というが、そっくりだ。谷垣は「初めから予算案を組ませてもらえたら、という思いがある」と釈明したが、釈明になっていない。こちらも「財政規律とはほど遠い」のではないか。
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